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筒香のニュースで改めて考えたカープらしさ

 メジャー昇格を目指しマイナーリーグでプレーしていた筒香が6月22日付けで自由契約になったと発表され、マエケンの時と同じように話題になった。そしてまたもや「日本球界復帰」の話が出た。正直、ここまでは良かった。しかしニュースには「筒香のような左の大砲を欲しがっているのは広島」「ファーストとサードが固定できていないため補強ポイントとしては完璧の条件」という文言が。それを語ったのは「スポーツ紙記者」。え~と。あなた誰ですか? まさにさっきの話の繰り返しのようだが、ここでもそれらしいことを言う謎の人物が現れたのだ。

 マエケンが復帰するのは嬉しい。でも筒香を獲りにいくのは違うだろ。私はそう思った。あくまでマエケンは「帰ってくる」のであり、筒香は違う。そもそも「筒香のような左の大砲を欲しがっているのは広島」とは? あの~、林晃汰という選手をご存知ですか? 他にも韮澤雄也とか将来有望な左打者はいますけど? そう言いたくなる。ちなみに、本音を言えばこれはただの「思わせぶりニュース」だと思っている。しかし。今回このような話が出て、筒香に限らず、実際に誰かが日本球界に復帰するとして、それがカープ出身の選手じゃなかった場合「獲りにいく必要があるのか」。言いたいのはここなのだ。

 昨年、カープは秋山翔吾を獲得した。黒田の復帰劇ほどではないが、カープ入団など誰も想像していなかったのでカープファンは沸いた。そしてカープに欠かせない戦力となった。私自身、カープを選んでくれた秋山を心から応援している。

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 しかし。心の片隅で「こういう形の獲得が続いていいのか?」と思う自分もいる。カープと言えば、FAした他球団の選手を獲得せず、即戦力だけではなく高校生なども積極的にドラフトで獲得し、伝統の猛練習で育てる。ファンは自分の嗅覚やセンスを信じ、若いころから応援する。やがてその選手が一軍でデビューし、主軸となり、カープを背負う選手となる。外国人選手に関しても、ドミニカのカープアカデミー、優秀な駐米スカウトなど、お金よりも自分たちの「目」で選手を日本に連れて来る。そういうチームのはずだ。

 新球場が完成し、球場に訪れるカープファンの数は圧倒的に増え、様々なグッズなどの好セールスもあって、旧市民球場時代よりもカープという球団はお金に余裕が出てきた。かつては「2億止まり」と言われていた年俸の最高値も飛躍的に上がった。それについてはなんの問題もない。むしろいいことだ。しかし、秋山の獲得などに勢いづいて、今回で言う筒香、あるいは「カープの選手ではなかった誰か」を積極的に獲りにいく。そんな球団にはなってほしくないのだ。カープファンは、いや、少なくとも私は「強くなるために即戦力の選手を他球団(メジャー含む)から獲得するカープ」など望んでいない。そういうチームが好きなら、そもそも最初からカープを応援していない。

 カープファンは、自分の息子や弟や近所のお兄ちゃんを見るような目で若手選手に夢を膨らませる。将来はあの人のようになってほしい、あの人の背番号を継いでほしいと想像する。それが楽しいのだ。今回たまたまマエケンと筒香のニュースでカープの名前が出たのでこういう形で書かせてもらったが、これからもカープは自分たちで選手を育てる球団であってほしい。そして元カープの選手の「復帰」と他球団の選手の「獲得」。戦力の補強という意味では同じかもしれないが、広島東洋カープが本来持っている魅力とは相反するものだと言いたい。果たして、皆さんはどう思われますか?

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