佐々木朗希投手の脇腹負傷……あまりに衝撃ですね。日ハム時代には大谷翔平、ロッテに来て佐々木朗希と2人のスーパースターを育ててきた“彼”とすれば、コーチとして最大の試練を迎えていると言ってもいいでしょう。
今日はそんな黒木知宏投手コーチ(49)との思い出話を紹介しながらエールを送ります。
無人島で雨風をしのぎながら野宿した日
私が黒木さんと出会ったのは現役時代。ファンの皆様はご存じの通り、彼は「野球選手じゃなかったら釣具屋のオヤジになりたかった」と公言するほどの釣り好き。中でも磯釣りは“プロはだし”の腕前です。実は私も小学生の頃から釣りをやり続けて50年の釣りバカなのですが、こと磯釣りに関しては、あまり経験がありませんでした。そこで黒木さんのチームメイトにして、これまた釣りが大好きな35年来の親友・堀幸一(現ロッテ2軍打撃コーチ)と共に、外房の太海での磯釣りにご一緒させていただいたのです。
狙いは磯釣りの代表魚メジナ。小舟に乗って沖に浮かぶ広さ10畳ほどの磯に渡してもらうという釣りは初体験。船から降りる時も「荷物を渡してください」「手につかまって」と、文字通り手取り足取り教えていただきました。つまり黒木さんは私の磯釣りの師匠というわけです。
師匠の教えは厳しかった……。この日はあいにく潮回りが悪く、魚の食いが渋かったので黒木さんをもってしても大苦戦。ましてや私はまるで釣れず……。いろいろと教えてもらったら、ようやく手のひらサイズのメジナが釣れたのでクーラーボックスに入れようとしたのですが、黒木さんの“待った”がかかりました。
「逃してやりましょうよ、マツモッさん!」え、なんで?「まだ小さな子供じゃないですか、逃してやりましょうよ」いや、でももう釣れないかもしれないし……。「逃してやってもらえませんか!」
最後はカッと目を見開いて凄まれたので、泣く泣くリリース。ことほど左様に黒木さんの釣りは単なる遊びというより“釣り道”。道を誤った行為は許してもらえません。筋を一本通す! これは彼の一番の人生観だと思います。
ただ黒木さん、あまりにのめり込んでしまい痛い目に遭ったことも。評論家時代、地元の九州でやはり沖の磯で釣りをしていた時のこと。天気が急変して、なんと迎えの船が来られなくなってしまったのです。運良く、その場所はかつて人の往来があった無人島で、船の発着小屋があったそうな。やむなく小屋で雨風をしのいで野宿。翌朝、空腹でもうたまらんと思っていたら、すっかり凪いだ海の向こうから釣り客を乗せた船がやってきた。
そしてその中に、偶然にも釣り好きの先輩・浜名千広さん(ダイエー~ヤクルト~ロッテ)がいたんですよ……って、黒木さん、そんなことあるんですか~!?
事情を話して浜名さんから握り飯を分けてもらったという黒木さん、その強運もまたスゴいところ。