暴走族を足抜けしようとした15歳少年がリンチで死亡した2003年の事件。加害少年たちに裁判官が突きつけた言葉が、賛否両論を招いた理由とは?
2007年の新書にもかかわらず、書店での再ブレイクをきっかけに累計発行部数42万部を突破。フリーライターの長嶺超輝さんが法廷での個性あふれる肉声を集めた語録集『裁判官の爆笑お言葉集』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
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「君たちは産業廃棄物以下」
富永良朗審判官「暴走族は、暴力団の少年部だ。犬のうんこですら肥料になるのに、君たちは何の役にも立たない産業廃棄物以下じゃないか。」
暴走族メンバーだった15歳少年が、他のメンバーからリンチを受けて死亡した事件。非公開の少年審判の中で、担当の審判官(裁判官)から、そのような主旨の発言があったと、のちに加害少年の両親が、地方裁判所で証言した中で。
※本件は少年審判を終えた段階で、少年院送りなどの保護処分よりも刑事処分のほうが相当として、あらためて傷害致死容疑で水戸地裁に起訴されていた。
(水戸家裁下妻支部 富永良朗審判官 当時52歳 2003.7.22[その他])
「裁判官失格だ」「よくぞ言ってくれた」……この発言に関しては、当時、賛否両論が真っぷたつに別れました。産業廃棄物以下、すなわちリサイクル不能。少年審判の趣旨が、懲罰でなく少年の立ち直りを見守ることにある以上、その趣旨にそぐわないと批判されても仕方ないのかもしれません。
被害者の少年は、闇夜の中で約1時間にわたり殴る蹴るの集団暴行を受け、非業の死をとげました。しかも、特にメンバーの誰かに危害を加えたり、裏切ったりしたわけではなく、ただ暴走族から足を洗おうとしただけなのです。
勇気を振りしぼって群れから抜けようとする人間を、群れなきゃ何もできない輩が、群れて袋だたきにする。卑怯なことこの上ない犯行に対し、富永判事は、批判を覚悟の上で、あえて毒をもって毒を制する発言に及んだのではないでしょうか。(続きの「言葉は悪いが、単なるロリコン編」を読む)