援助交際の犯人は、なんと現役の裁判官……日本の司法の歴史のなかで、裁判官が裁判官を裁くという異例の事件の顛末を紹介。

 2007年の新書にもかかわらず、書店での再ブレイクをきっかけに累計発行部数42万部を突破。フリーライターの長嶺超輝さんが法廷での個性あふれる肉声を集めた語録集『裁判官の爆笑お言葉集』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)

裁判官が裁判官を裁く――異例の裁判の内幕とは? 写真はイメージ ©getty

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「単なるロリコン、単なるスケベおやじ」

山室惠裁判長「言葉は悪いが、単なるロリコン、単なるスケベおやじだったのではないか。日本の司法の歴史の中で、とんでもないことをしたというのは分かってますな。」

 

 児童買春・児童ポルノ処罰法違反の罪に問われた、東京高裁の現役裁判官(当時)村木保裕に対する被告人質問で。

 

(東京地裁 山室惠裁判長 当時53歳 2001.7.23[質問])

「刑事裁判にプレッシャーを感じていた」と供述していた村木元判事の裁判です。

 土曜日の昼下がり。14歳の少女から電話で呼び出され、JR川崎駅に普段着で出かけていった被告人。そこへ近づいてきたのは張り込み中の警視庁捜査員で、彼のウキウキ気分は一気に吹き飛びます。少女はすでに警察署で保護されており、その供述や通話記録から、被告人の容疑が浮上していたのです。

 署への任意同行を求められると、「助けてくれ。警察を呼んでくれ!」と被告人がわめき出したので、緊急逮捕に切り替えました。しかし、取り調べで職業を明かされ、驚いたのは署員のほう。半信半疑で、書類には「自称裁判官」と記録していたほどです。

写真はイメージ ©getty

 伝言サービスに「小遣いをあげるので友達になりましょう」などと吹き込み、年端もいかぬ少女と会っていた被告人。33歳の会社員と称し、偽名も使っています。刑事裁判官なら、こういう手口は日々の職務で嫌というほど知り尽くしていたのでしょう。

「まさかこんな事件で、裁判官を裁くとは思ってなかったよ」と、12期後輩の被告人に向けてつぶやいた山室判事。しかし、裁判官を罷免されることが確実で、実刑にするのは総合的にみてバランスを欠くとして、判決では懲役刑に執行猶予がつけられました。(続きの「元暴走族15歳少年リンチ殺人事件編」を読む)