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『君たちはどう生きるか』 宮﨑駿監督が最新作に秘めた空襲体験と半藤一利氏の縁を鈴木敏夫プロデューサーが初めて語った

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 7月14日、宮﨑駿監督の10年ぶりの新作『君たちはどう生きるか』が公開された。同作は、事前の宣伝をほぼ出さず、あらすじやキャストに至るまで、あらゆる情報が伏せられていた。今回、「週刊文春」の取材にスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが、作品のワンシーンとその背景について初めて明かした。

スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサー ©文藝春秋

 同作は公開4日間で観客動員135万人、興行収入21.4億円を突破する大ヒットを記録。戦中、戦後の日本を舞台にしたこの作品では、宮﨑監督が敬愛するある人物との対話の成果が反映されていたという。

 その人物とは、2021年に亡くなった作家・昭和史研究の第一人者で“歴史探偵”と名乗った半藤一利氏。前作『風立ちぬ』の公開を前に対談をした2人は意気投合し、対談本『半藤一利と宮崎駿の腰ぬけ愛国談義』(小社刊)を刊行するなど親交が深かった。

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2人の対談本『半藤一利と宮崎駿の腰ぬけ愛国談義』

「宮﨑さんは、半藤さんの著作の大ファン」

 半藤氏をよく知る編集者はこう話す。

「半藤さんは、宮﨑さんと対談をするまでは、『となりのトトロ』と『紅の豚』しか見たことがなかったそうです。一方の宮﨑さんは、半藤さんの著作の大ファンだった。その2人が零戦の設計者である堀越二郎を主人公にした『風立ちぬ』の公開前に対談をすることになったのです。対談のあと半藤さんは、宮﨑さんについて『本当に飛行機について詳しい方なんだよ』と、嬉しそうにおっしゃっていました」

“歴史探偵”の半藤一利氏(左)、宮﨑駿監督 ©文藝春秋

 夏目漱石、昭和初期の東京など、2人の話は尽きなかったが、中でも戦争体験は大きなテーマだった。半藤氏は1945年、14歳の時に東京大空襲を体験し、宮﨑氏も4歳の頃に別の空襲に遭っている。