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サッポロ社員ですらその存在を知らなかった…世界中のクラフトビールを支える「ソラチエース」の数奇な運命

source : 提携メディア

genre : ビジネス, 商品, 企業, 国際

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ビールは量産型から少量多種の時代へ

2016年にキリンはブルックリンと資本提携。18年10月、日本国内でキリンとブルックリンの合弁会社が「ブルックリン ソラチエース」を北海道で先行発売し、翌年2月には全国発売に切りかえた。

サッポロは19年4月から、「イノベーティブブリュワー ソラチ1984」を先行発売した。さらに、茨城県の有名クラフトブルワリー「木内酒造合資会社」(那珂市)は、2社よりも早く「常陸野ネストビールNIPPONIA(ニッポニア)」をすでに10年6月に発売していた。

いずれの商品も、アメリカ産ソラチエースが使用されている。

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ちなみに、サッポロはその生産量から、アメリカならばクラフトビールのカテゴリーに入る。

ソラチエースが紆余曲折の末、全米の醸造家たちに認められていったのは、クラフトの再成長が始まり、さらに多様性が商品に求められるようになった背景があった。

だが、クラフトビールそのものも、今なお揺れ動いている。浮沈は絶えないし、醸造所が合併するなどで、定義から外れるケースもある。

コロナ禍前の18年、全米のクラフトビールは約7000社を数え、数量では米ビール市場の約13%を占めた。金額ベースでは24%程度(17年)だった。

「スーパードライを世界ブランドに」アサヒの進撃

これに対し、2022年におけるクラフトビールの数量による市場全体のシェアは、前年比0.1ポイント増の13.2%。生産量は前年より50万バレル減少し2430万バレル。数字からは、シェアも生産量も伸び悩んでしまっている現状が浮き上がる。

それでも、アメリカのクラフトビールは、量から価値への転換を図る日本のビールメーカーにとっての先行指標である。

アサヒは2010年代に世界でM&Aを繰り返し、欧州や豪州の麦酒会社を傘下に収めた。この結果、2022年末で海外売上比率が約52%としている。具体的には2016年に西欧で約2900億円、17年に中東欧で約8700億円を投じて複数のビール会社を買収。