ベイスターズがきっかけを掴めそうな試合は間違いなくありますが、タイガースとカープ両チームの追走は、一進一退。ひと月で状況が変わったペナントレースを気に留めながらも、私達tvkの中継スタッフにとって7月は高校野球神奈川大会の実況や番組に邁進する日々でした。

 3日後に開幕する第105回全国高校野球選手権記念大会、神奈川代表として甲子園に乗り込むのは慶應義塾高校。神奈川大会の決勝は息詰まる流れでしたが9回の逆転3ランで決着、横浜高校に6対5で競り勝ちました。

 神奈川大会3連覇に一歩届かなかった横浜高校、試合後エース杉山遙希投手を記者の方々が囲みます。杉山投手は今年の神奈川大会随一の左腕、1年時からショートの緒方漣主将と共にチームをけん引し、進路をプロ野球の世界に定めています。将来の話に取材が及んだ際「憧れている投手は?」と質問された杉山投手は「今永昇太さん」と即答。「質の良いストレート、カウントを整える変化球の精度」が理由です。

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 大会前の取材でも杉山投手に今永投手が目標と伺っていましたが、高校野球最後の場で発せられた今永投手の名を改めて耳にすると、これから続く夢にエールを送らずにはいられません。

決勝を戦った慶應義塾高校ナイン ©tvk

今永投手以外にも、沢山のベイスターズ選手を推す声

 今年の神奈川大会では、中継や取材を通して随分ベイスターズとの縁を感じました。

 私の場合、中継の事前取材で各校を訪ねた際、時間が許せば一人一人に「憧れ、理想とする選手」を聞きます。それぞれの目標や取り組みが垣間見えるからです。今年は当然ながら大谷翔平選手や吉田正尚選手を筆頭にWBC戦士が大人気ですが、その中、特に左投手からは今永投手の名が最も多く挙がりました。

 今永投手と答える球児たちの言葉には、憧れにとどまらない具体的な理由が添えられています。そのキーワードは「ストレート」「気持ち」「コントロール」「効果的なチェンジアップ」など。確かに大谷選手に心躍らせ憧れる球児は多いのですが、いざ目標となると別次元。一方今永投手に感じる凄さは、練習の延長線上に見えるのかもしれません。多くの球児が、頑張って身体を強くし、課題を克服し、ここぞという場面で今永投手の様なストレートを投げたいのだと、知りました。

今永昇太投手 ©tvk

 今永投手以外にも、沢山のベイスターズ選手を推す声が。神奈川の高校球児に聞くのだから当たり前と思われるかもしれませんが、例えば15年ほど前に同じ質問をした頃とは様相が違います。当時は各チームのベンチ入り20人全員に話を聞く中で1人、2人が好きな選手として「三浦大輔投手」「村田修一選手」「内川聖一選手」「金城龍彦選手」ら、ベイスターズの選手を挙げてくれましたが、あとはジャイアンツ、タイガース、ホークスの選手が多数派。その後筒香嘉智選手の活躍でだいぶ盛り返し、今は応援するチームや選手も多様化する中にあって、かつての2〜3倍ほどベイスターズの選手に憧れる高校球児が増えている印象です。

 主な声を拾うと

「大貫晋一投手の、どんな時も淡々と投げる姿」
「チームに元気を与える桑原将志選手」
「山﨑康晃投手の一球を大切にする心」
「勝負強い牧秀悟選手」など、具体的です。

 また「3兄弟全員同じ県立高校のピッチャーで三浦監督を応援、お母さんは山﨑投手が好き、お父さんだけがジャイアンツファン」というご家族にも出会い、さすがに、お父さんの頑張りにも敬意を表しました……。

 当然ベイスターズが力をつけ、優勝を目指す魅力的なチームになったことが大きな要因ですが、神奈川の高校生世代には少々の後押しもあったのかなと、思い当たることがあります。