今年は10月26日に行われることが決まったドラフト会議。夏の甲子園が終わると各球団では候補選手の絞り込みが本格化し、9月にはどの球団が誰を上位候補としているかという記事も多くなる。8月のこの時期としては少し気が早い話ではるが、西武にとって狙い目の選手は誰なのか、チーム事情や今年の市場から探ってみたいと思う。

 現在の西武の状態を一言で表すと“投高打低”である。パ・リーグ全体も同様の傾向が見られるが、西武はレギュラーの大半が中堅、ベテランであり、二軍まで見てもある程度将来の中軸として見通しが立っているのは渡部健人とルーキーの蛭間拓哉くらいしか見当たらない。昨年も蛭間、古川雄大、野田海人と上位3人を野手が占めているが、蛭間と古川は完全なスラッガータイプではなく野田も捕手ということを考えると、今年もまずは打線の太い柱になれる可能性を秘めた野手を狙いたい。

 そして今年の市場もその方針を後押しできる材料が揃っている。大学生投手に有力候補が多く、昨年であれば1位指名されるくらいの実力やスケールを秘めた選手が2位や3位に回る可能性も高いのだ。幸い西武はある程度投手は揃っており、高校卒3年目の豆田泰志、2年目の黒田将矢、羽田慎之介、菅井信也も順調に成長を見せている。チームとしてもその手応えを感じているからか、今年の高校生の有力候補の視察に西武のスカウトだけがいないということもあった。高校生投手の優先度は少し低いと見てよさそうだ。

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佐々木麟太郎の日本人離れした魅力

 以上のことを踏まえてまず1位で狙いたい選手だが、今年は迷うことなく佐々木麟太郎(花巻東高校)を推したい。高校通算140本塁打という数字が大きくクローズアップされており、6年前に当時の新記録である111本塁打を放った清宮幸太郎(早稲田実業高校→日本ハム)がプロ入り後に苦労していることから、不安を指摘する声も多いが、その打者としてのポテンシャルの高さは疑いようがない。

花巻東の佐々木麟太郎 ©時事通信社

 特に圧巻だったのが6月に愛知県で行われた招待試合で、前年秋の県大会で準決勝に進出した強豪4チームの投手陣を相手に4試合で4本塁打を放ち、その全てが場外弾という規格外のバッティングを見せたのだ。この原稿を書いている時点では夏の甲子園ではホームランは出ていないが、逆方向への打球も右打者が引っ張ったかのような速さがあり、大舞台でも改めてその能力の高さを見せている。

 体重110kgを超える巨漢、怪我の多さ、レベルの高い投手への対応など不安要素はもちろんあるが、そもそもそんなものがないアマチュア選手は存在しない。日本人離れしたスイングスピードと飛距離はそんなマイナス要素を補って余りある魅力がある。できれば早々に1位指名を公言して、打線を立て直す本気度を見せてもらいたいところだ。

 佐々木は今年の目玉選手の1人であり、当然複数球団による競合も予想される。そうなると外した時のことも考えておく必要があるが、次候補としては真鍋慧(広陵高校)と広瀬隆太(慶応大学)の2人を推したい。

 真鍋は左打者、広瀬は右打者と左右の違いはあるが、共通しているのは遠くへ飛ばす能力の高さだ。真鍋は“広陵のボンズ”の異名をとり、恵まれた体格で左中間にも大きい当たりを放つ。広瀬は東京六大学で4年春までに通算18本塁打を放っており、高橋由伸(慶応大学)の持つ最多記録23本塁打に迫っている。ともに穴はあるものの、プロでもクリーンアップを任せられる可能性を秘めた長距離砲だ。