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ディズニー入園料1万円で驚いてはいけない…本場アメリカで進む「お金のない人は排除」という残酷な実態

source : 提携メディア

genre : ニュース, 経済, 国際

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ファストバスを確保した来場者は、空き時間を利用して空いているアトラクションに向かうことができる。これによりパーク全体としてアトラクションの運営効果が高まる。ファストパスを発券した際、無料でおまけのパスが付いてくることがあったが、これも空いているアトラクションへの誘導を意図したものだ。

最後に、人気の高いファストパス対象アトラクション自体にも、ピーク時間帯を分散する効果が生まれる。ファストパスの券面に指定された時間通りにゲストが戻ってくるためだ。

ファストパスは、来場者の行動をコントロールすることを企図したものであり、料金を取らずとも運営側にメリットを生むシステムだ。「ファストパスの有料化」は、来場者がメリットを感じられない仕組みと言えるだろう。

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スマホに依存した予約至上主義

スマホに依存した過度な予約至上主義もまた、来園者の大きなストレスになっている。

コロナ禍以降は、システムが特に複雑化した。日本でも一時期、アプリをインストールして「スタンバイパス」を取得しなければ、一般列に並ぶことさえできない状況となっていた。現在でも一部のショーとグリーティング(キャラクターとのふれあい)を対象に、「エントリー受付」と呼ばれる抽選制度が導入されている。

こうした事情はアメリカでも同じだ。値上げにより滞在予定を短縮したという前出のアメリカ人女性は、CNNに対し、「ウォルト・ディズニー・ワールド(WDW)を訪れたのが旅行の中でも最もストレスの多い一日だった」と語る。ライトニング・レーンの利用時間を加味した行動計画を綿密に立て、予約や抽選をひたすら繰り返さなければパークを最大限楽しむことができないからだ。

パーク情報を報じる米インサイド・ザ・マジックは、これが来園者の体験を蝕んでいると分析している。記事は「バケーションはいまや神話に過ぎず、早朝(からの行動)、携帯の充電切れ、長蛇の列など、安らぎとはほぼ正反対のことが当たり前のようになっている」と指摘する。