「彼はハーメルンの笛吹き男のようです。沖縄県民をいったいどこに連れて行こうとしているのか」

 沖縄県の翁長雄志知事(67)をこう批判するのは、前知事の仲井眞弘多氏(78)だ。在任中は、米軍普天間飛行場の移設先とされた名護市辺野古の埋め立てを承認する手続きを進め、長年にわたる普天間問題に区切りをつけた。だがその後、「辺野古移設阻止」を掲げて知事となった翁長氏が、仲井眞氏による承認手続きに瑕疵があったとしてこれを取り消す。一昨年12月の最高裁判決は、仲井眞氏の手続きに瑕疵はなく、翁長氏による取り消しこそ違法とした。今回は、2月4日の名護市長選の結果を受けて、3時間に及ぶ「文藝春秋」のインタビューに答えた。

仲井眞弘多前沖縄県知事 ©文藝春秋
翁長雄志沖縄県知事 ©共同通信社

 まず、渡具知武豊氏(無所属新人で自民、公明、維新が推薦)が、翁長氏が推す対立候補を約3500票の大差で破った名護市長選の結果について、「多くの名護市民は辺野古移設の是非は決着がついたと捉え、基地問題で街を二分して対立を繰り返すよりも、市民の暮らしや生活、あるいは経済振興をどうするのかを優先したのではないかと思います」と冷静に分析した。

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 そして、4年目に入った翁長県政について、こんな危惧を吐露した。

「沖縄の一人あたりの県民所得は2014年度で212万円あまりしかなく、残念ながら全国最下位を抜け出ることができないでいます。子供の貧困率も3割近くもあって全国平均の2倍。大学進学率は40%に満たず、これも全国最低水準です」

名護市長になった渡具知武豊氏 ©共同通信社

「本来は県知事たる者、この閉塞感を打破するために取り組むべきです。ところが、翁長知事は『基地問題に労力の8~9割を費やしている』と発言しています。私からすれば、残りの1割や2割で何をやるの? と言いたくなる」

 その他、沖縄に思い入れが深く、先日亡くなった野中広務元官房長官への思いや、相次ぐ米軍の不祥事や日米地位協定への考え、また「沖縄独立論」を巡る考察などについても、仲井眞氏は思いのたけを語った。仲井眞氏へのインタビュー全文は、「文藝春秋」4月号に10ページにわたって掲載されている。

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