松本文明 内閣府副大臣
「それで何人死んだんだ」
朝日新聞デジタル 1月26日
今週の珍言、暴言、問題発言を振り返る。国会でいきなり暴言が飛び出した。25日の衆院本会議で行われた代表質問で、共産党の志位和夫委員長が沖縄県で続発する在日米軍機の事故やトラブルについて触れた際、議員席から自民党の松本文明内閣府副大臣が「それで何人死んだんだ」とヤジを飛ばした。松本氏は内閣府副大臣を2回務め、1回目は沖縄北方担当も務めていた。
松本氏は記者団に「不規則発言で、人が亡くならなければいいのかというような誤解を招いた」と述べ、26日に辞表を提出、受理された。事実上の更迭だ。安倍晋三首相は「沖縄の皆さん、国民の皆様に対して深くおわびを申し上げたいと思います」と陳謝した(日テレNEWS24 1月29日)。
松本氏の発言が2月4日に行われる沖縄県名護市長選に大きな影響を与えるのは必至だ。名護市長選は、政権が同市辺野古で進める米軍普天間飛行場の代替施設建設への賛否が大きな争点になっている。今年、沖縄では年末の知事選を含め、18の首長選が続くが、安倍政権への批判は高まるばかりだ。
沖縄では昨年12月から米軍関係のトラブルが続く。米軍ヘリの部品が屋根で見つかった宜野湾市の緑ケ丘保育園の神谷武宏園長は「この1カ月半、たまたま死人が出ていないだけ。死人が出なければ政府は動かないのか」「沖縄の状況、沖縄の民に向き合わない政府に憤りを覚える」と強く批判した(朝日新聞デジタル 1月26日)。
なお、松本氏は2016年4月に発生した熊本地震の政府現地対策本部長を務めていたが、わずか数日で交代している。現地で食事におにぎりが配られたときに「こんな食事じゃ戦はできない」と不満を言い、避難所への支援物資配布をめぐって「物資は十分に持ってきている。被災者に行き届かないのは、あんたらの責任だ。政府に文句は言うな」と地元の自治体職員を怒鳴りつけていたという。県や被災自治体は「松本氏が震災対応の邪魔になっている」と不信感を募らせており、事実上の更迭と見られているが、菅義偉官房長官は「体力面を考慮した」、河野太郎防災担当相(当時)は「交代は予定通り」と強調、松本氏を擁護していた(西日本新聞経済電子版 2016年4月21日)。
琉球新報は1月27日の社説で「聞きようによっては、一連の米軍事故で死人は出ていないじゃないか、とも受け取れる。辞任して済む話ではない。松本氏は発言の真意を説明する責任がある」と指摘している。安倍首相は国会で「沖縄の方々の気持ちに寄り添いながら、基地負担の軽減に全力を尽くす」と述べているが、それなら松本氏に真意を説明させるべきだろう。
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礒崎陽輔 元首相補佐官
「英米系を除いて、新しい憲法にはどこでも(私権制限の規定が)ある」
毎日新聞 1月31日
自民党憲法改正推進本部は31日、今年初の全体会合を行い、大規模災害などに対応する緊急事態条項の創設について議論した。会合では国会議員任期の延長などに加え、私権制限も検討すべきだという意見が相次いだ。
私権制限とは「社会全体の向上と発展のために個人の権利を大幅に制限しようという考え方」(コトバンクより)。2012年の党改憲草案では、首相が閣議決定を経て「緊急事態宣言」を出せると規定しており、法律と同等の効力を持つ政令の制定権を内閣に与え、解除されるまで、国民の生命、身体、財産を守るための政府や公の機関の指示に「何人も従わなければならない」と定めている。日本への武力攻撃、内乱やテロ、自然災害などが緊急事態として想定されている(時事ドットコムニュース 1月31日)。
安倍首相に近い礒崎氏らが私権制限も必要だと主張したのに対し、岩屋毅元副外相は、私権制限は世論の理解が広がらないと訴えた。また、公明党の北側一雄副代表は記者会見で「政府の権限強化や国民の権利制限を憲法上、規定する必要性は感じていない」と述べている(毎日新聞 2月1日)。