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「男女平等は反道徳の妄想」自民党の女性議員が“女性を貶める暴言”を繰り返す根本原因 ナチス女性加害者との共通点

source : 提携メディア

genre : ニュース, 政治, 社会

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ドイツの第101警察予備大隊(ホロコーストで中心的な役割を担った親衛隊とは別組織で、ナチ占領下のポーランドで四万人近いユダヤ人を殺害)について、厖大な文書記録で詳細に研究した、アメリカ人の歴史家クリストファー・R・ブラウニングの著書『増補 普通の人びと:ホロコーストと第101警察予備大隊』(谷喬夫訳、ちくま学芸文庫)に、以下のような記述があります。

大量虐殺について考察する上で、〔受けた命令の意味を熟考する〕時間の欠如と同じくらい重要なことは、順応への圧力であった。─それは軍服を着た兵士と僚友との根本的な一体感であり、〔命令に従わない意思表示として〕一歩前に出ることによって集団から自分が切り離されたくないという強い衝動である。(p.126)

この本では「順応への圧力」という言い方がなされていますが、実質は同調圧力と同義だと考えて間違いはないでしょう。倫理的あるいは道徳的に考えて、その命令への服従や行動の是非を考えるのでなく、集団内での自分の「立ち位置」という観点でいちばん最適な行動をとる。そうすることで、集団の中で自分の立場は保たれる。

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ナチスのホロコーストが、あれほど大規模かつ組織的に実行された背景には、同調圧力という我々の身近な問題とも繋がる、心理的な動機も存在していたのです。

「エルナ・ペトリ」はナチスだけの話ではない

所属する集団内で、自分の地位を向上させたり、周りの「みんな」に自分の有能さを認めてもらうために、内部で共有される価値観や行動原理に沿った行動をとる。

このような「集団内の同調圧力への積極的な対応」の事例をいくつか見てきましたが、それは時として、論理的に説明がつかない「矛盾」や「自己否定」へと実行者を導くことがあります。

例えば、前出のエルナ・ペトリのような女性が「男たちに自分の有能さを証明してやりたい」と考えた時、ナチスの迫害対象が「ユダヤ人」ではなく「女性」であったならどうでしょう。女性であるペトリは、「自分の有能さや存在価値を男たちに認めさせるため」に、男たちによる女性差別や女性迫害に自らの意思で加担することになります。