上田 確か古田さんは、大谷選手がプロになって3年目ぐらいの頃に、日本ハムの沖縄キャンプに行かれたと思いますが、そのときの印象を教えてください。
古田 そもそも僕は、大谷君が1年目のときから、二刀流をやるべきだと言っていました。そもそも150キロ投げるピッチャーに、“ピッチャーやめろ”なんて言えませんし、バンバンホームラン打つのに“バッターやめろ”とも言えませんから、とりあえずいけるところまでいってほしいと思っていました。
プロ野球選手は、いつかはケガするもので、多分肩肘をやってしまいます。そうすると、いずれはバッターになると思うんです。大谷選手は、幸いなのかどうかはわかりませんが、早めにケガをして手術して復帰したからよかったですが、ピッチャーとして復帰できない可能性もありました。ですから、どちらかに絞るのは、ケガをしてからでいいのではという感覚だったので、二刀流でいけるのではないかと言っていました。
当時、160キロというのは夢の世界です。僕が現役の頃に受けたボールで最も速かったのは、横浜の(マーク)クルーンというピッチャーで、最速162キロぐらい。きれいなスピンの効いたストレートを投げるピッチャーといえば、阪神の藤川(球児)君で、球速は155キロぐらいでした。ボールがピンッと伸びてきますけど、大谷選手の球速は、それを明らかに超えています。藤川君の球速を5キロも超えているわけで、それをやめろと言うのは、あまりにももったいないことです。
大谷選手は様々ピッチャーを合体させた感じ
上田 どっちかって言ったらバッターとしての才能のほうが高いんですか? それとも、ピッチャーと同じぐらいのレベルなんですか?
古田 両方トップレベルです。大谷選手は、ストレートの速さだけではなく、スライダーもフォークも素晴らしいです。あんなボールを投げる選手はいません。
たとえば、スライダーならヤクルトの伊藤(智仁)君がいいとか、ダルビッシュ(有)がいいとか言いましたが、はっきり言ってそれとまったく遜色ないです。
上田 昨年投げていたスライダーは、ものすごく曲がってましたよね。
古田 そうですね。フォークボールも、たとえば僕らの時代なら、横浜の大魔神(佐々木主浩)とか、野茂(英雄)君とかの名前があがるけど、それより上です。