もはやデベロッパーは一般国民など相手にしていない
つまり販売価格で4億円は超えてこないと超高級マンションとは呼ばないのだ。たしかに東京の赤坂や六本木などで最近販売されるマンションでは価格が4億円を超える住戸は珍しくない。
そして今、業界で新たに話題になっているのが、港区三田1丁目で三井不動産レジデンシャルと三菱地所レジデンスが共同開発する三田ガーデンヒルズだ。このマンションは25年3月に引き渡し予定の総戸数1002戸の巨大プロジェクトだが、タワマンではなく地上14階建てのマンション2棟である。住戸面積は29.34㎡から376.50㎡だが、平均坪当たり単価は1300万円。アマンレジデンスの価格と比べれば何やらかわいらしく映るが、価格表をみると85㎡(25.7坪)3LDKで3億3000万円である。面積が広い住戸は立派な4億ションなのだ。到底一般国民が買うことができるレベルではもちろんない。
このマンションにもコンシェルジュやポーター、ドアマンがつき、バトラーサービス(執事)、バレーサービス(キー預かり駐車代行)などのサービス機能が満載、ワークスペースやプール、ジム、フィットネスなど多彩な共用施設を楽しむことができる。
こうした動きを見るにつけ、つくづく思うのは、もはやデベロッパーは一般国民などを相手にしたビジネスはしていないということだ。良いにつけ、悪いにつけ、日本人の二極化は進行するいっぽうだ。部厚かった中間層は崩壊し、少数の富裕層と、大多数の貧困層に分断されていく日本で、誰を相手に商売をすればよいのかは彼らにとっては明らかなのだ。
超高級マンションは富裕層のおもちゃに
魔夜峰央原作のコミックで映画にもなった「翔んで埼玉」という作品の中で、
「埼玉県人にはそこらへんの草でも食わせておけ!」
という有名なセリフがあるが、これを埼玉県人ではなく一般国民に言い換えられる時代が迫っているのかもしれない。
デベロッパーは上級国民様に、彼らが満足するような超高級マンションを提供して機嫌を取ることに忙しく、草でも食わせておけばよい一般国民を相手にすることに興味を失っている。
超高級マンションは富裕層のおもちゃとしてさらに磨きがかかった領域に入っていくだろう。たかが建物であり、経年劣化していくものに大枚をはたき、自分たちに傅くサーバントたちに虚栄心をくすぐられるにしかすぎないのだろうが、人類はどの時代になっても本質は変わらないのである。