2022年4月19日は、最高裁判所第三小法廷で、マンション業界、税理士、金融機関などの関係者全員が固唾をのんで判決を待つ日だった。
「主文『本件上告を棄却する』」
結果は関係者にとって非常に厳しい判決となった。この裁判は、多額に及ぶことが予想される相続税課税の軽減・回避を狙って、マンションを購入。購入の際に借入金を付けた調達を含めることで、全体での相続財産評価額を圧縮する手法に関する国税当局と相続人たちの争いに対して、初めて最高裁が判断を下すものだったからだ。
新築マンションの買い手
マンションが高騰しているのにもかかわらず、売れていると言われて久しいが、業界にとっては、相続税対策のために高額のマンションを購入する、被相続人の存在は貴重なお客様だ。
日本の世帯年収(中央値)は1995年頃の550万円をピークに下がりはじめ、現在は437万円に低迷している。いっぽう新築マンション価格は東京都区部ではついに9000万円台に突入。いくら金利が歴史的低水準、かつ所得税などにおける多額の特典が用意されている環境下でも、一般庶民がマンションを手にすることはほとんど絵空事になっている。
現在、新築マンションの買い手は地方の富裕層、国内外の投資マネー、夫婦で年収合計1500万円を超える超パワーカップルに加え、相続税対策として多額の借入金を調達して購入する高齢者、という4つのカテゴリーしか存在しない。その一角に対して最高裁が突きつけた判決の意味合いは重い。
相続税対策として被相続人名義・借入金つきで購入
さてこの裁判の内容を簡単に追ってみよう。裁判の原告は、マンションの相続人Aさんたちである。被相続人Bさんは、平成21年1月に8億3700万円でマンションを購入。この際金融機関から6億3000万円を借り入れた。さらに同年12月に別のマンションを5億5000万円で購入。ここでも金融機関から3億7800万円を調達している。
この購入にあたっては、相続人Aさんたちは被相続人Bさんが高齢であり、相当額の資産を抱えていて、このまま相続すると6億円強の相続税が発生することを懸念していたという。そこで、2つのマンションをBさん名義で借入金つきで購入したのだ。