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税務署が抜いた「伝家の宝刀」
Aさんたちは、これらマンションと他の財産を合わせて平成25年3月に相続税申告を行った。相続した財産全体の課税価格はなんとわずか2826万円。相続の際の基礎控除額の範囲内であり、ついに相続税はゼロ、ということになったのだ。
これに異を唱えたのが税務署だ。実は財産評価基本通達の6では、上記手法によって計算された財産の時価が著しく不適当で他の納税者に比べ公平性を欠くと判断された場合には、国税庁長官の指示のもと他の方法を使って評価しなおすことが認められていることから、鑑定評価を行い、正しい「時価」を算定すべきとしたのだ。この手法は業界の関係者の間では「伝家の宝刀」と呼ばれるもので、せっかく節税対策が完了したと思っても税務当局側が宝刀を抜く可能性が残されていることを表現したものだ。
相続税ゼロから2億4000万円に
平成28年4月、税務署は鑑定評価を取ったところ、マンションの評価額は2つあわせて12億7300万円(購入価額の92%)だとし、他の財産を含めた全体の相続財産評価額は8億8875万円に跳ね上がり、相続税2億4000万円の支払いを求めた。
入念に準備した相続税対策。大成功と思いきやの大どんでん返しを喰らった口惜しさだろう。Aさんたちはこれを法廷闘争に持ち込み、曖昧な時価評価について徹底抗戦を挑んだのだ。
Aさんたちの気持ちは理解するものの、マンション購入価額のわずか4分の1に評価された価格が時価というよりも、確かに鑑定価格(92%相当)のほうが時価の感覚に近いものがある。やりすぎはなんでも厳しいしっぺ返しとなって跳ね返る典型的な事例となってしまった。