昨年は相変わらず変異を繰り返す新型コロナウイルスに翻弄されながらも、経済活動を妨げてきた数々の規制はとりはずされ、人々はコロナとのつきあいかたをそれぞれの対応の仕方も含め、ウィズ・コロナの生活を身に着け始めた1年だった。いっぽうで、ロシア、ウクライナが戦火を交え、北朝鮮や台湾でも不穏な動きがみられるなど国際情勢が激変、エネルギーコストの高騰から始まった諸物価の高騰、年末には防衛費の増強を旗印とした増税が検討され始めるなど、人々の生活には不安感が漂い始めている。

 こうした中で迎える新しい年、2023年では日本の不動産マーケットはどのような動きを見せるだろうか。昨年の記事でも同様の予測を行っているが、2022年末になって読み返してみても、ほぼ予測通りのマーケットとなっている。予測は予測に過ぎないので、今年が当たるかどうかは皆目わからない。ただ当たる確率を上げるためには、世の中に対する夢や願望をもとに語るのではなく、マーケットを取り巻く諸情勢を冷徹に読み込むことである。さて、今年のマーケットを予測してみよう。

©iStock.com

日本だけが低金利政策を続けてきたが…

 今年、心配されるのが新築マンションマーケットである。背景にあるのが金利だ。昨年アメリカFRB(連邦準備制度理事会)は7回にわたって政策金利を引き上げ、政策金利の誘導目標を過去15年で最高水準である4.25%から4.5%とした。さらにFRBでは今後1年間で政策目標金利を5%までに引き上げるとしている。他の先進国も追随して金利を引き上げている背景には世界的に進むインフレの進行を早期に終息させようとの意図がある。

ADVERTISEMENT

 こうした中で日本だけが低金利政策を続けてきたが、12月20日の日銀黒田総裁の会見で、10年物国債の金利を中央銀行が操作する「長短金利操作(YCC:イールドカーブ・コントロール)」の許容変動幅を0.25%から0.5%に広げた。このことは、黒田総裁は否定するものの実質的に金利を引き上げたと同様のショックを金融マーケットに与え、円高、株安の年末を迎えることとなった。