1ページ目から読む
2/4ページ目

住宅マーケットに最も影響を与える「金利」

 実はマンション購入などの住宅マーケットに最も影響を与えるのが金利だ。すでに大手銀行の住宅ローンの固定金利は、黒田発言を受けて、三菱UFJ銀行で1.05%(0.18ポイント増)、三井住友銀行で1.14%(0.26ポイント増)、みずほ銀行で1.4%(0.3ポイント増)というように本年1月から続々と引き上げがアナウンスされている。

 住宅ローンをすでに借り入れている人にとって気になるのは変動金利での場合だが、変動金利は短期金利に連動するので今のところ影響はないが、短期金利が低いまま長期金利だけが上がり続けることは少なく、時間差で短期金利にも影響が出るものと予想される。物価高に加えてローン金利が上がれば、生活への影響は計り知れない。

 新築マンションを購入する際に、これまで目先の金利の低さを理由に変動金利で返済計画を立てがちであったものが、金利の動向にナーバスになると、実際問題として金利がさほど上昇せずとも購買意欲に相当の影響を及ぼすものとされる。住宅購入にあたっての優遇税制も時限立法のものが多く、優遇内容が徐々に縮小されていく中、2023年の新築マンションマーケットにとっては少なくとも良い影響はなさそうだ。

ADVERTISEMENT

一般以外の住宅マーケットは

 もっとも、新築マンションマーケットを語る場合、一般実需層とは別に、(1)富裕層、(2)相続対策、(3)インバウンドマネーといった全くカテゴリーの違う顧客でマーケットの一部が構成されている。彼らにとっては金融マーケットでのこの程度の変化はあまり影響がなく、都心高額物件の売れ行きに大きく水を差すようなことはないものと予想する。

 これからの一般実需層のマンションマーケットは明らかに中古物件が中心となる。すでに首都圏1都3県での中古マンションの成約件数は新築マンションの供給戸数を上回っている。そうした意味で中古マンションマーケットに金利上昇への警戒感が災いして一定の影響が及ぶものとみる。

 またこれは今年に限ったことではないが、今後首都圏の既存住宅地の多くで大量に相続が発生することが予測されている。しかも相続の中でも二次相続といって、一度相続が起こった後の相続、つまり両親ともに亡くなる相続が多発することが予測されている。二次相続が発生すると、相続人が住まない限り、実家を売却する、賃貸に拠出するなどの動きが顕在化してくる。そうした意味では、大都市郊外部を中心に中古の売却、賃貸物件は激増していくのが住宅マーケットの将来像だ。