厳しい状況が続く、オフィスマーケット
オフィスについては一昨年からすでに変調をきたしている。昨年は都内新築の大型オフィスビル(延床面積1万㎡以上)の竣工が少なかった(約49万㎡)のにも関わらず、空室率は東京都心3区で6.5%前後をうろうろし、年間を通じて回復の兆しはみえなかった。コロナ禍をきっかけに働き方を変え、常時通勤を求めない企業が増えたことが背景にある。大手企業でのオフィスの縮小や廃止の発表が陸続した1年でもあった。
今年は新築オフィスの大量供給(約145万㎡)がある中で、オフィスマーケットはもう一段厳しい状況を迎える年となりそうだ。昨年8月に竣工した中央区八重洲の東京ミッドタウン八重洲ではテナントの入居が進まず、オフィス部分を含めてプレオープンとして、グランドオープンを今年3月まで引き延ばしたこともこうした厳しいマーケットを体現している。今年は森ビルが開発した麻布台プロジェクト、虎ノ門ヒルズステーション、東急不動産が開発した渋谷桜丘プロジェクトなど大規模オフィスの竣工が相次ぐが、テナントの決定情報は少なく、満室竣工の声は聞こえてこない。
これらの大規模ビルでは事業主は威信にかけてもテナントを埋めていくだろうが、自社運営ビルを含めた既存ビルからのテナントの引き抜きを活発化させることから、既存オフィスビルでの二次空室は顕著になるものと予測する。また引き抜きにあたってはフリーレント(一定期間の賃料免除)や賃料の引き下げなどが行われるため、マーケットは荒れ模様となるだろう。
2025年にはさらに120万㎡もの大量供給が予想されるオフィスビルマーケットでは、これからも稼働率の悪化(今年は都心3区で7%台に上昇)、平均賃料の低下(同2万円割れ)は避けられず厳しい時代の幕開けとなりそうだ。