オミクロン株の流行が止まらず、1月8日には約4カ月ぶりに、全国のコロナ感染者数が8000人を超えた。しかし、強い感染力のわりに重症化リスクは低いという報告もあり、マスクの着用や手洗いといった基本的な感染対策の徹底が今まで以上に重要だ。
約100年前に世界を席巻したスペイン風邪の例を見ても、発生から3年を経過した今年は、おそらく疫病に怯える日々は少なくなり、世の中は徐々に健康な状態に戻ると考えたい。いっぽうですべてが2019年時点、つまりコロナ前の生活状態に戻るのかと言えば、現在では多くの人々がコロナ前に戻るとは考えていない。
人々の生活のインフラを担う不動産においても、今年は大きな変節の年になる。これまでの成功の方程式が通用しない時代の幕開けである。本稿では、今年から大きく変化を始める不動産マーケットについて、お話ししよう。
「通勤」の変化はオフィスビルに影響
まずコロナ禍で大きく変容したのが、人々の働き方である。これまで全くあたりまえの行動と考えられてきた「通勤」が、約2年にわたって制約された結果、多くの業種や職種において、必ずしも毎朝通勤をする必要がないことが判明した。いまだにクラシカルな会社では、コロナが過ぎ去った後、以前の行動様式である通勤を復活させようという動きもあるが、世の中のトレンドは少なくとも、自宅やコワーキング施設などでのテレワークと、ミーティングやコミュニケーションを主体としたオフィスでの働き方のハイブリッド型に進化しつつある。すでにJRをはじめ鉄道各社も、通勤客がコロナ前の状態に戻ることがないと予測して、列車本数の削減を検討し始めた。
こうした動きで最も深刻な影響を被るのがオフィスビルである。コロナが流行し始めた当初こそ、オフィスビルを解約、面積縮小をするのは中小のIT系企業などごく一部であり、オフィスマーケットには何ら影響はないと、自信たっぷりにコメントする関係者が多かったが、今、マーケットの足元は大きく崩れ始めている。