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都心にアドレスを持ちたい富裕層でマンションマーケットは安定か

 マンションマーケットはオフィスに比べると複雑だ。需要が多岐にわたって分散を始めているからだ。まず都心にあるタワーマンションやブランド立地に建つハイエンドな超高級マンションは、今年もある程度の売れ行きを保ちそうだ。世の中では誤解されているのだが、このクラスのマンションを買う層は、一般人、いわゆる実需層が少ないのだ。東京都心にアドレスを持ちたい地方富裕層、国内外の投資家、節税対策をしたい高齢富裕層に、世帯年収が夫婦で2000万円を超えるような超パワーカップルだけで成り立っているマーケットだからだ。

 ただし、こうしたマーケットは世界の金融マーケットの動きなどの影響を受けやすい。中国などで不動産の暴落などが発生すると、連鎖反応で一気にマーケットが崩れる可能性もある。

郊外シフトが進んでいる実需層

 実需層は20年前などと比べると、高齢化による人口構成が変わったことから3分の1から4分の1になっている。彼らは都心マンションには手が届かないが、働き方が変わる中、必ずしも都心に居を求める必要がなくなり、郊外シフトが進んでいると言われる。マンションデベロッパーの多くはこうした需要を捕まえようと郊外、衛星都市周辺などでの用地取得に注力しているが、実需層にとっては焦って買い求める環境ではなくなってくるのが今年からのマーケットだ。

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 長く続いている金融緩和の影響で地価が高騰。人件費や資材費の値上がりで新築マンションは高騰を続けている。郊外でも4000万円台後半から5000万円台の分譲価格は、世帯平均年収(中央値)で437万円の一般庶民にとっては高嶺の花である。

 今年は住宅税制の優遇が縮小されたことの反動に加え、心配されるのが諸物価の高騰だ。原油価格の高騰は、ガソリンのみならず、電気代、ガス代の値上げ、物流コストの上昇による配送料等の高騰につながる。食料自給率が38%(カロリーベース)の我国では通貨安は、輸入食料品の値上げに直結する。住宅ローンの返済は、こうした生活の基礎コストを払ったうえでの返済となる。返済負担感が一層募ってくるのが今年からである。