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多くが期限を迎えるテナント契約

 三鬼商事の発表によれば、都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィスビル空室率は6.35%と、貸手借手の優位な立場が入れ替わるといわれる5%ラインを超えている。また港区では8.54%と完全に借手優位な状況に陥っている(2021年11月時点)。街を歩くと「テナント募集」の看板を掲げたオフィスビルも目立ち始めている。

 今年は、新築ビルの供給が例年よりも減ったためマーケットが大きく崩れる懸念は少ないとの見方があるいっぽうで、オフィスビル業界では上得意とされる情報通信系やゲームなどのソフトウェア、電機、設備機器などの業種で、解約や面積の縮小が相次いでいる。

 現在、大規模ビルにいる多くのテナントは、オーナーとの間に3年から5年程度の定期建物賃貸借契約を結んでいる。今年はコロナ前に締結していた契約で期限満了を迎えるテナントが多いのだ。オフィスマーケットは2018年初頭に空室率が3%を切った後、2020年2月に1.49%という空前の低率を記録するまで、活況を呈してきた。この期間中に、「なくなっていく」オフィス床を確保しようと、新規オフィスの拡充や増床に走るテナントが多くいた。これらのテナント契約で今年多く期限が到来する。

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大手企業が次々オフィス床面積を縮小

 すでに富士通は、三井不動産が運営する汐留シティセンターをはじめ東京都内で約1万5000坪、横浜や川崎までを含めると2万坪を超えるオフィスを解約している。リクシルは江東区にある本社ビルを売却、オフィス床を従前の1割、つまり9割削減するという衝撃的な発表をしている。NEC、三菱電機も同様の動きを始めている。テナントとの契約が今年期限満了を迎えるビルオーナーは、心休まることがないはずだ。

汐留シティセンター付近 ©️iStock.com

 従来オフィス床需要の強い、電気通信系に加え、ゲームなどのソフトウェア系も面積の縮小が顕著だ。DeNAは渋谷ヒカリエを解約してスクランブルスクエアのWeWork内に移動。座席数を4分の1にしただけでなく、オフィス賃料という固定費をコワーキング施設利用料という変動費に転換した。ヤフーは赤坂見附の紀尾井タワーやKタワーで計9000坪を解約した。

 さらに今年は来年以降続々竣工を迎える、東京駅八重洲口、京橋、日本橋、虎ノ門、神谷町などの新築大規模ビルが、テナント獲得のため熾烈な勧誘を行う。すでにテナントは奪い合いの状況だ。いままでテナントに対して高飛車な営業を続けていた大手デベロッパーがいきなり低姿勢になったとの噂もあちらこちらから聞こえてくる。

 需要が萎む中、来年から25年にかけて大量供給を迎えるオフィスビルマーケットは大激変の年だ。