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今井絵理子議員は令和のマリー・アントワネットか…政治家が空気を読めないSNS投稿をしてしまう根本理由

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「不人気総理」の登場に大歓声が上がる理由

落とし穴、その2:自分には人気があると勘違いしてしまう

私は記者として、最も長い時間を費やしたのは企業取材だが、スタートは政治部だった。テレビの政治部記者は、まず総理大臣を担当する「総理番」となるのが定番だ。

「国の最高権力者をなぜ駆け出し記者が取材するのか」と思われるかもしれない。だが、総理大臣の動静を追うのは、実は最も簡単な取材なのだ。なにしろ総理大臣といえば公人中の公人。「隠密行動」が取りにくいので、経験の浅い新人記者でも十分に対応可能なのだ。

私が総理番として担当することになったのが、当時の森喜朗総理だった。口の悪い週刊誌からは「サメの脳みそ・ノミの心臓」などと揶揄され、内閣支持率も8%まで低迷。まさに「歴代屈指の不人気総理」だった。

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そんな不人気極まりない森総理の地方視察に同行取材したときのことだった。「きゃーっ、森さーん‼」。大勢の女子高生たちが、大声で森総理に呼びかけているのだ。まるで「国民的アイドルが町にやって来た」ような大騒ぎだ。森総理もまんざらでもないようで、笑顔で呼びかけに応じていた。

別に好きだから歓声を上げるわけではない

私は森総理を担当後、当時、政治家として全盛期を迎えていた亀井静香自民党政調会長の番記者に担当替えとなった。当時の亀井氏は「強面」で鳴らす「自民党有数の権力者」だが、決して「国民的人気」を持つ政治家ではなかった。だが、亀井氏の地方視察に同行したときも、森総理同様、やはり若い女性たちの熱狂的な歓声を受けるのだ。

なぜ「歴代屈指の不人気総理」や「強面の有力政治家」が、行く先々で若い女性の歓声を受けるのか。しばらくは謎のままだったのだが、あるとき私の疑問は氷解した。同行取材の際、ついさっきまで歓声を上げていた女子高生たちの、政治家が去った後の会話を耳にしたからだ。

「テレビで見るのと同じだったね」。彼女たちはそう、嬉しそうに話していた。「この歓声は『テレビで見たことがある有名人』の来訪に対する驚きであって、別に好きだからというわけではない」という「当たり前の事実」に、私は気がついたのだった。