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 そもそも『範馬刃牙』とは、どんな作品なのだろう。原作は板垣恵介、地下闘技場の最年少チャンピオン範馬刃牙を主人公に熱い格闘を派手なアクションと共に描く。1991年から描き続けられている「グラップラー刃牙」シリーズのひとつで、シリーズは90年代からたびたびアニメ化されている。

 一部のコアファンに支持されてきたが、いまの人気は2018年にスタートしたトムス・エンタテインメント版の『バキ』が起点になっている。いまでは少数派の太い実線で描かれるキャラクターが特徴で、筋肉の筋までがくっきり浮かび上がる。ストーリーと同様のかなり濃いビジュアルである。原作の勢いをしっかりと残す。

「範馬刃牙」2期PVより

 第1期、第2期と好評を博し、2021年からは『範馬刃牙』として、新たにNetflix独占配信、先行リリースとなっている。もともとNetflixの数ある日本アニメのなかでも、特に数字がよいと話題になっていたことが世界独占配信になった理由と思われる。

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 世界で人気の日本アニメと言えば、日本ではスタジオジブリ作品や「ドラゴンボール」「ONE PIECE」といったジャンプ原作アニメが話題になる。そこでなぜ『バキ』なのか、そこには日本アニメの世界人気のこれまで知られてなかった側面が浮かび上がる。

 番組の世界同時配信が強まるなかで、日本と海外の人気作のテースト差は薄れつつあるとされている。しかし、こんな時代でも、明らかに日本より海外でより受ける作品がいくつもある。アニメファンより一般視聴者が多いNetflixは、そんな傾向が顕著になる。激しいアクション、格闘はそんな人気の題材のひとつだ。『ケンガンアシュラ』、『終末のワルキューレ』といった日本以上に海外で人気なアクション重視のタイトルは少なくない。

 さらに7月24日からのグローバルランキングを見ると、家族から虐げられていたヒロインが美形の霊能者一族の当主と結婚する『わたしの幸せな結婚』や、ゾンビが溢れる世界でサバイバルする『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』もあり、日本との人気の違いに驚かされる。

終末のワルキューレ 公式PVより
ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと アニメ公式サイトより

視聴時間で比べると、1話が短いアニメは不利

 そんな異例の人気を博する『バキ』は、なぜこれまでに注目されなかったのだろう。実はNetflixの最近のランキング集計方法の変更にも理由がある。

 これまで日本アニメは世界で人気が高いとされてきたが、2021年11月にNetflixが番組ランキングの公開を始めると、日本アニメが意外に強くないとの指摘もされるようになった。グローバルランキングに日本アニメがあがらないのだ。非英語テレビシリーズランキングは韓流ドラマばかりで、日本アニメのタイトルはごく限られていた。

 それがこの夏、ランキングに載る日本アニメが急に増えだした。これがランキングの集計方法を変えた影響である。これまでのランキングは視聴時間をベースにしていた。つまりシリーズが長く、エピソード数の多い作品が上位を占めていたのだ。これはエピソード数が多く、シリーズが長い韓流ドラマに有利に働いていた。一方の日本アニメは23分~30分前後で全12話、13話が中心と総尺が短い傾向にあり、視聴時間で比べるとランキングされないというわけだ。