エビちゃんがもうファームでやることはない
サード小深田大地の胸板はパンパンで、44番を背負っていることもあって数年前の佐野恵太を彷彿とさせる。セカンド粟飯原龍之介の身体能力は高いし、ショート西巻賢二は球際に強く、捕球からスローイングの動きも無茶苦茶速い。西巻は守備固めで一軍に帯同してほしいけど、一軍のショート要員は現状埋まっている。
育成選手を見るのも楽しい。俊足レフト村川凪の守備範囲は広く、細身の身体から繰り出すスイングは決して非力ではない。シーズン中の支配下入りが期待された勝又温史はクリーンヒットを放ち、ライトのポジションへ毎回全力疾走するのも好印象。この日大橋武尊の出番はなかったものの、客席から手を振るチビッ子にボールを投げ入れたり、ネーム入りタオルを掲げるファンにレスを送ったり。ツイッター上でリプ返しするほどのファンサービスへの積極性は、グラウンド上でも存分に発揮されていた。
第3の外国人野手T・アンバギーは代打出場でレフト線二塁打。一度は一軍の試合で見たいけど、果たしてその機会はあるだろうか。スタメンを外れても若手に混じってイニング間のキャッチボール相手を務める姿に、それだけチームに溶け込んでいる事が感じられる。
8回にはベテラン三嶋一輝が登板。ピッチャー返しの打球を好フィールディング連発でさばく姿はまさに三嶋の真骨頂。この日登板したベイ投手陣の中ではやはり格が一段上だった。格が違うと言えば、四番を打った蝦名達夫も同じ。守りのミスから一、二軍を行ったり来たりの今シーズンだが、この日放ったレフトへの二塁打も、強い当たりのサードライナーも最早ファームのレベルではない。本人も心に期するところがあったのだろう。昨日(8月29日)急遽一軍に合流すると、2点ビハインドの9回に関根大気の代打でセンター前ヒット。佐野の同点弾、牧秀悟の勝ち越し弾を呼んだのは間違いなく蝦名の積極性だった。エビちゃんがもうファームでやることはない。このまま一軍のレギュラーまで昇りつめてほしい。
千円ちょっとで観戦できるファームの試合は、改めてじっくり野球を楽しめる喜びに満ちた世界だった。そんな筆者の今の望みは、望遠レンズ付きの一眼レフカメラが欲しい!ということ。ファーム沼の皆さんが最前列でいいカメラを構えている光景を目の当たりにして、心の底からそう思った次第である。
◆ ◆ ◆
※「文春野球コラム ペナントレース2023」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/65177 でHITボタンを押してください。
この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。