北海道と本州を結ぶ青函トンネルが開通したのは、いまから30年前のきょう、1988(昭和63)年3月13日のことだ。トンネルを通るJR北海道の海峡線(青森県・中小国~北海道・木古内間)が新たに開業し、この日午前3時半から4時ごろにかけて、前日に東京と札幌を出発したJR貨物のコンテナ列車があいついでトンネルを通過、続いて旅客の1番列車である午前7時23分函館発・盛岡行き特急「はつかり10号」と同29分青森発・函館行き快速「海峡1号」が、午前8時半ごろ、トンネル中央付近ですれ違った。
津軽海峡の海底に鉄道トンネルをつくる構想は戦前からあり、終戦直後の1946年には地質調査を開始、1964年に着工され、じつに42年の歳月をかけて完成にいたった。総延長53.85キロは、2016(平成28)年開通のスイスのゴッタルドベーストンネルに抜かれるまで世界最長だった(海底トンネルとしては現在も世界一)。北海道と本州がレールで結ばれ、函館や青森など地元は祝福ムードに包まれる一方で、トンネル工事の第1陣の総合令(現場監督)が《喜ぶ前に、犠牲になった人たちのめい福を祈りたい》と語るなど、元トンネルマン、あるいはトンネル建設の機運を高めるきっかけとなった青函連絡船・洞爺丸事故(1954年)の犠牲者の遺族らは、開通に際し、あらためて故人をしのんだ(『朝日新聞』1988年3月14日付)。
それまで青森~函館間を結んできた青函連絡船は、青函トンネルが開通したこの日かぎりで、1908(明治41)年以来80年にわたった運航を終えた。青森行き・函館行きの各最終便である羊蹄丸と八甲田丸は、午後6時57分、津軽海峡のほぼ中央部ですれ違い、互いに何度も汽笛を鳴らしながら、乗客たちも相手が見えなくなるまで手を振り続けた。
その後、2016年3月26日には北海道新幹線の新青森~新函館北斗間が開業、青函トンネルは新幹線と在来線が共用するようになった。