「何か細工をしているのだろう」1時間以上のチェックを受けるも…
開幕戦では時速10kmだったモトパークとの差は、第2ラウンドで5kmに縮んだ。第3ラウンドでは3kmまで迫り、ついにトップ争いの域に到達したのだ。「だんだんと、自信にあふれた走りになっていった」と父は目を細める。
そして迎えた第4ラウンド。5番手でスタートし、まずは1台を抜いた。ポジション争いはいつも以上に加熱。激しいバトルの最中、Jujuはライバルとの接触を避けながら、冷静にチャンスを待った。
そして、その時は来た。トップ2台がクラッシュし、Jujuの前を走るマシンも一瞬の躊躇を見せたのだ。「行くしかない」――わずかな隙を突き、一気に抜き去った。
「トップになってもJujuの走りはプレッシャーを感じさせず、堂々としていました。このまま後ろを引き離して勝ってしまうなと」
父には確信があった。しかし、"無事に”勝利できるのか、最後の最後まで不安がぬぐえなかったという。
「極限まで攻めたチューニングでしたから、一歩間違えばマシントラブルに繋がる。チェッカーフラッグを受けるまでは安心できませんでした。それに、上位3台はレギュレーション(規定)違反をしていないか、マシンを検査されるんです。『弱小チームがモトパークに勝てるわけがない。何か細工をしているのだろう』と、部品の位置が1ミリでもずれていないか、重箱の隅を楊枝でほじくるように調べ尽くされる。案の定、モトパーク勢は車検を10分で通過したのに、我々は1時間以上チェックされました。潔白が証明されて、ようやくJujuは表彰台の中央に上がれたのです」
表彰台へと進む彼女を、ライバルチームも温かな拍手と笑顔で讃えた。モータースポーツの本場であるフランスの地に、日の丸が高々と掲げられ、君が代が流れる。表彰台でトロフィーを掲げ、満面の笑みを見せるJuju。”ありえない勝利”が叶った、万感のシーンだ。
「17歳の女の子が優勝してのけたなんて、もしJujuがフランス人やイギリス人だったら、今ごろF1のチームから声がかかっているでしょうね。育成枠に入れてもらえて、そうすればこの先はもう何も心配いらない。ただ環境のことは言ってもどうにもなりませんから、今の状況を受け入れて、また一歩一歩進んでいくしかない」
父が吐露する通り、Jujuの前には厚い壁が立ちはだかっている。F1界のスーパースター、アイルトン・セナが、人種差別のなかで身を削りながら栄光を掴み取ったように、モータースポーツは未だ”政治と金の世界”だ。(続きを読む)
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「萩庭桂太 YOUR EYES ONLY」Jujuインタビュー
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