Jujuも「周りからも、無謀なチャレンジだと何度も言われた」と振り返る。
「私たち自身もかなり難しい状況だと理解していました。現実的に考えてトップ5に入れるかどうか。シーズンを通して、1回でも表彰台に乗れたら最高だねって」
事実、開幕戦は絶望的だった。ストレートでの最高時速で10km以上の差をつけられ大敗。ここまで差があると「コーナーでいくら巻き返そうと、見えなくなるくらい遠くに引き離される」という。
「正直、これは勝負にならない。このまま挑み続けても、私もチームも終わる」
沈みかけた心に灯った“父との約束”
沈みかけた心に灯ったのは、幼い頃に父と交わした約束だった。
”負けても負けても諦めない”――。
「父から『ドライバーになれ』と言われたことは一度もありません。むしろ『少しでも迷いがあるなら、早くやめた方がいい』と。F1の世界で戦っていた父は、レースをして生きていく過酷さを誰よりも知っている人ですから」
けれど、Jujuが前を見据えて進み続けるのならば、全力で応援する。負けたって構わない。そこで歯を食いしばってもう一度立ち上がるのなら、それは意味のある負けになる――父の教えとチームの支えが、彼女を奮い立たせた。
「モトパークに対して、私たちのマシンはどこが劣っているのか、どこが勝っているのか。些細な点まで徹底的に洗い出し、チーム全員でエンジニアを訪ね歩いて研究を重ねました。マシンのチューニングも耐久性ギリギリまで攻めてもらって。実は、ライバルチームのメカニックが私たちのピットにやってきて『Jujuならモトパークに勝てる。俺たちの分も頑張ってくれ』と作業を手伝ってくれたんです。あとは私が、チームで導き出した"チャンスを開ける走り”をできるかどうかでした」
F1という最高峰の舞台でしのぎを削ってきた父・英樹は、「レーシングドライバーにおいて、速いというのは最低条件。トップを争うにはフィジカル、メンタル、センスなど、プラスアルファがものを言う」と語る。
「Jujuの最大の武器は、開き直りともいえるほどの意志の強さ。何があろうと絶対に折れない、揺るがない。そして思い描いた理想の走りを、現実にできるセンスも持っている。サラッとやってのける姿を見ると、同じドライバーとして格が違うと感じますね」
闘志に火がついたJujuは、凄まじい追い上げを見せた。