今や社会に浸透した“不登校”という言葉。文部科学省によると「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」と定義されている。ではその“何らか”とは一体なんなのか? 『大原さんちの不登校』は、その“何らか”を追い求め家族一丸となって闘う……愛と執念の記録である。
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中学1年の次男に起きた異変
パニック障害と神経症持ちの夫との日々を描いた『このごろ少し神経症 大原さんちのダンナさん』に始まり、2人の息子の育児に奮闘する様子を描いた、大原さんちの息子シリーズ。そして、ネット上で賛否両論を呼んだ『息子がいじめの加害者に?』など、作品を通して大原家を見守ってきた読者からすると、待望の最新刊だ! とはやる気持ちと共に、タイトルにある“不登校”という文字に複雑な思いがよぎるのではないだろうか。
『大原さんちの不登校』は、中学生になった大原家の次男・レイが主人公。ちなみに、前作でいじめの加害者だと訴えられた長男・タケは中学3年生に成長しており、良き師や友に恵まれ充実した日々を送っている。そんな兄と同じ中学校に進学したレイ。きっとタケと同様に素晴らしい学校生活を送るのかと思いきや、中学1年生の夏休みに異変が起き始める。
生活習慣の乱れ、オンラインゲーム中毒によるクレジットカードの無断使用。さらに、学校では問題行動が目立つようになるレイ。根本的な原因が掴めず八方塞がりになる大原家だが、ついに中学2年生の新学期が始まるとレイは学校へ行くことができなくなってしまう。果たしてレイの不登校の原因はなんなのか? 大原家は出口の見えないトンネルに迷い込む。
子どもの問題に親はどう向き合うべきか
子どもに問題が起きたとき、どうしてか大人は“一つの答え”を導き出そうとする。けれど、決してそんな単純なことではなく、一つの答えだと思っていた生活習慣の乱れやオンラインゲーム中毒、学校での衝突……実は全てが地続きになっているのだということ。そして、散らばった点と点に真摯に向き合い、しっかりと繋いでいくことが第一歩なのだと本作は教えてくれる。
今までにないほどの緊迫感が漂う『大原さんちの不登校』。だけど、全シリーズ共通して続く、大原さん家の“対話をあきらめない姿勢”に家族の強い愛と絆を感じるし、読み終わったあとは何か小さな光を掴んだような気持ちになる。
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