「会社で1番か2番、低く見積もっても5番目くらいまでに入るくらいカッコいい人ばかりでした」
近年、人気を集める「女性用風俗」の世界――そこで働く男性たちの動機とは? 最新作『僕は春をひさぐ~女風セラピストの日常~』を制作するにあたって、多数の女性用風俗の関係者を取材してきた漫画家の水谷緑さんに教えてもらった。(全2回の2回目/前編を読む)
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「失業したシェフ」が女風のセラピストに
――どんな人が女性用風俗のセラピストになっているのですか?
水谷緑(以下、水谷) コロナ禍で失業したり収入が減った男性や、スケジュール的に働きやすいので副業としてセラピストになる男性が多いです。航空業界で働いていた人が副業として始めたり、コロナの後遺症で味が分からなくなったシェフが退職させられてセラピストになったというケースもありました。
――採用基準はあるのですか?
水谷 見た目の基準は相当厳しいと感じました。例えるなら会社で1番か2番、低く見積もっても5番目くらいまでに入るくらいかっこいい人ばかりでした。若いイケメン男性ばかりのお店もあります。
また、人柄が重視されます。初対面でもしっかりと目を合わせて挨拶ができるなど社会性がチェックされています。レディーファーストが基本で、女性に対してサッと車道側を歩いたり、ドアを開けてあげたりという対応が自然にできるタイプ。普段からモテる人でなければ通用しない印象です。
――何歳くらいの人が多いんですか?
水谷 30歳前後の人が1番多いです。30代で社会人経験のあるほうが常識的なマナーが身に付いているので活躍しやすいです。それに比べると40代や20代前半の人は少ないですね。30代中盤以降で生き残っている人は、テクニックや個性など何か秀でたものがないと厳しいです。
ユーザーから最も人気があるのも30歳過ぎくらい。アラサー、アラフォーの女性ユーザーは、「あまり若い男性が相手だと気が引けちゃう」「申し訳なさが先に立って没入できない」という人が多いんです。
実は辛いセラピストの内情
――セラピストは儲かるのですか?
水谷 セラピストの取り分は50%が相場なので、2時間コースの場合だと手取りは1万円程度。すごく気を遣う仕事内容なのに、収入は高いとはいえないと思います。指名される回数が多ければ稼げますが、その人次第でピンキリですね。
プロとして専業でやっている人もいるし、バイト感覚の人や、出会い系を利用する延長の感覚でやっている人もいます。専業ばかりの店もありますが、兼業の人しか採用しない方針の店もあります。専業だと指名を多くとろうという焦りが出てしまうので、余裕の感じられる兼業セラピストのほうがお客さんウケがいいからだそうです。
セラピストから登録料を5、6万円くらいとって、それで経営を成り立たせている店も一部あります。登録料だけ払わされて1人もお客さんがつかず辞めていく男性が多くいます。非常に厳しい世界で、7割の人が辞めていきます。