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お金でも、性欲でもない…“女性用風俗”で働く男性セラピストたちの「モチベーション」の正体【マンガあり】

漫画家・水谷緑インタビュー #2

2023/10/21
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水谷 「興奮していてほしい」という要望がよくあるので、バイアグラを飲むセラピストが多いんです。1回目はたっていたのに2回目はそうじゃないとクレームが来ることもあります。「興奮するまで待っているから」とたつまで許してもらえなくて、辛くて辞めてしまった人もいます。

 また反応が薄い女性が多く、「リアクションがないのは本当に不安」とも言っていました。「気持ちいい?」と聞いても本当のことは言わないだろうから、とにかく一生懸命奉仕して少しだけ腰がピクっとするのを見てやっと「気持ちいいんだな」と判断ができる。30年間セックスレスだった女性の中は硬いゴムのような感触で、それを少しずつほぐして柔らかくしていくそうです。

 性的なコミュニケーションは、例えるなら2つペダルがあるタンデム自転車のようなもの。2人で協力して漕がないと前に進まないのに、男性に任せ過ぎてしまう。そのため男性にプレッシャーがかかって上手くいかないことが多いと、ある店のオーナーは言っていました。

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――夫婦などの男女関係でも同じことが言えそうですね。

水谷 セラピストという仕事を介することで問題が見えやすくなると感じました。日本の女性は「受け身な方が女性らしくて良い」と思っている人が多いと思います。しかしセラピスト達は「僕達は気持ち良くなるのを後押しする存在。少し勇気を出して快感をキャッチしようとしてほしい」と言っていました。

 ただ一方で、大半の女性ユーザーが重視しているのは大切に扱われることで、イクことはあまり求められていないそうです。だから丁寧に奉仕することが一番大事。実際に達成できなかった時の方がリピート率が高いそうです。達成すると「やってやったぜ」と無意識に女性の扱いがぞんざいになってしまうのかもしれません。

「女性は性に対するタブー意識が強い」

――女性用風俗を作品に描くことで伝えたいことはありますか?

©細田忠/文藝春秋

水谷 女性用風俗が以前より流行しているのは、女性が自分の欲を自覚して、それを大事にできつつあることかなと捉えています。性的な不満は、無視しようとしても色々なところで影響がでるもの。ときにはそれが、他者への支配欲や自己嫌悪に形を変えることもある気がします。

 取材したユーザーの中には、厳しく育てられ自分を押し殺して生きてきたという人が沢山いました。まだ女性の性に対するタブー意識は強いですが、もう少し自分の欲望に向き合って、異性と接する練習や、息抜きに使ったりしてもいいんじゃないかなと思います。こんなふうに細かく取材したことをもとにリアルに描いていますので、ぜひ漫画も楽しんでいただけたら嬉しいです。

お金でも、性欲でもない…“女性用風俗”で働く男性セラピストたちの「モチベーション」の正体【マンガあり】

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