「シーズン前から祐大のおかげ」
家庭で東を支えた方がいる一方、グラウンドで東を支えた人間がいる。山本祐大。東は彼への想いを、シーズンを振り返りながら存分に聞かせてくれた。
どんな立場であれ、悩みや課題というものは尽きないものである。東も例外ではなく、厳しい場面を任される状況での悩みや課題があった一方、シーズン前はローテーションを勝ち取れるかどうかの瀬戸際に立たされ、大いに悩んだ。悩み続けるシーズン前、オープン戦の対ソフトバンクで、2023年シーズン初めて祐大とバッテリーを組むことになった。それまでの登板では好不調の波があった。この試合で結果を残すかどうかで東の野球人生は大きく変わっていただろう。「後悔のないように、この試合はこれがしたい、こう攻めたいっていうのを伝えた」と、登板前の祐大とのやり取りを教えてくれた。結果としてこの試合は好投を納め、何とかローテーションの枠を勝ち取った。シーズン途中からブームとなった「祐大のおかげ」。これに関しても、なにも公式戦に限った話ではない。「1年間ローテーション守れたのは本当に祐大のおかげやし、シーズン前から祐大のおかげ。何とか生き残れた」と、祐大への感謝も惜しまなかった。
シーズン前にはローテーション入り崖っぷちの投手だった東だが、東はもちろんのこと、祐大も大きく成長した一年だった。祐大の話をする時の東は、イタズラ小僧ではなく頼れるお兄ちゃんのようであった。「シーズン途中までは、俺が降板したら祐大も代打を出されることが多かったんやけど、裏で泣いてたのも見てたから。試合に対する熱い思いとか、最後までマスクをかぶれへん悔しさとか、そういうものを感じた。それがだんだん最後までマスクを被れるようになってきて、俺としても嬉しかったよ。祐大にとっても大きな成長になったんじゃないかな」
自分が投げるだけで精一杯になる投手も多い中、東は祐大のことを常に気にかけていたのだ。そしてそれは、祐大も同じに違いない。まさに、文句なしのベストバッテリーだと胸を張ってほしい。
この賞を受賞して尚、東には油断も慢心もなかった。噛み締めるように、祐大に想いを馳せるように、この一年を総括してくれた。
「試合を重ねるごとにお互い成長できたし、今後の野球人生へのプラスは大きいと思う。ベストバッテリー賞を受賞させてもらったけど、まだまだ今後、最高のバッテリーになっていけたら」
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