安全保障上、重要な施設の周辺を対象とした重要土地利用規制法が全面施行されるなど、外国資本による土地取引に厳しい視線が注がれる中、航空自衛隊千歳基地(北海道千歳市)の周辺の土地を、中国系の経営者が購入していたことが、「週刊文春」の取材でわかった。この土地の売買を巡っては、かつて千歳市議会でも問題視されたことがあり、論議を呼びそうだ。

 昨年9月に全面施行された重要土地利用規制法は、自衛隊の基地や原子力発電所などの重要施設の周辺約1キロを「注視区域」と定め、土地の利用状況を調査し、施設の機能を害する行為があれば、罰則付きの命令を科すことができる。政府は今年9月、規制対象の候補地として新たに161カ所を土地等利用状況審議会に示すなど、注視区域の追加指定に踏み切る方向だ。中でも、北海道では新たに新千歳空港や倶知安駐屯地など56カ所が注視区域・特別注視区域に加わると見られる。

新千歳空港から500メートルの土地を中国系経営者が取得

 問題の土地は、航空自衛隊の千歳基地に隣接し、自衛隊が管制を一体的に担う新千歳空港から東に500メートルほどに位置している。不動産登記簿によれば、当該土地の住所は苫小牧市。約7.9ヘクタールの「原野」で、2014年1月、香港に住所を置く中国系の経営者T氏が購入していた。この土地売買を巡っては、同年6月、千歳市議会でも自民党議員から「中国資本が取得したのでは?」との質問が出るなど、問題視されていた経緯がある。

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2014年に購入された土地

 T氏はどんな人物なのか。香港の法人登記簿などを精査したところ、彼の叔父は中国やマレーシアを拠点に巨大木材企業「R」を経営する人物であることが判明。米「フォーブス」誌による世界の大富豪ランキングに登場したこともあるほどだ。一方、T氏自身もRの関連企業で役員を務め、日本では香港のクラフトビールを販売・店舗展開する企業などを経営している。

 T氏にこの土地を売却した男性に話を聞いた。

「Tは私の娘と結婚しました。好青年です。香港のシャングリラホテルで盛大な式を挙げてくれました。叔父の自家用ジェット機で新千歳空港に乗り付けることもあります」

華僑社長の名前が記された香港の登記簿

――あの土地は?

「空港の拡幅で価値が上がることを見込んで2000万円で買いました。その後、資金繰りのために、Tに500万円で売った。Tは中国共産党との繋がりはないと思いますが……」