「ファンに一言“ささやき”を」とオーダーすると…
津田はかねてから「日本の“若さ至上主義”はもったいない」と感じていたという。言葉のひとつひとつを確かめるように、静かに想いを語ってくれた。
「齢を重ねることが、まだまだネガティブに捉えられている社会ですよね。とくに女性は『若さこそ絶対』という視線にさらされる場面が多いのではと思います。その考えって、すごくつまらないなと感じていて。スポーツ選手と同じで、現役時代よりもその後の人生の方がはるかに長い。若さに執着するよりも、年齢ごとの喜びや楽しみを抱きしめて生きていく方がずっと豊かなのになと。カッコいいおばあちゃん、最高じゃないですか。グレイヘアの潔さが注目を集めたように、加齢を楽しむ動きが性別を問わず広まってくれたらいいですよね」
50代で写真集出版に踏み切った根底には、人生の年輪を刻んだ“今の自分”をポジティブに受け止め、世に発信したいという願いもあったという。
「昔、蜷川幸雄さんの舞台に出演させていただいたことがありまして。『イギリスの役者は早く齢をとりたがる』というお話を伺ったんです。例えばシェイクスピアの戯曲を演じるにしても、20代の若造では太刀打ちできないのだと。人生経験を重ね、成熟した精神と技術を得た役者だからこそ演じられる。なんてカッコいいんだと胸が震えました。
人生100年時代、僕もまだまだ折り返し地点ですから(笑)。この先を一緒に楽しく生きていきましょうよと、この一冊を通してユル~くお伝えできたら嬉しいですね」
インタビューの終わり、「写真集を購入するファンに一言“ささやき”を」とオーダーすると、メガネの奥の瞳がいたずらっぽく笑った。そっと耳打ちするように、両手のひらを口もとに添え、一段と低い声でささやく。
「……じっくり見て、ね?」
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津田健次郎 写真集「ささやき」
通常版 10月13日発売 ¥3520(税込)
144ページ A4判
豪華版 12月6日発売 ¥9900(税込)
通常版写真集の豪華版カバーverに加えて、下記の特典付
・写真集「ささやき」文庫版 つだ文庫
・津田健次郎と旅するオーディオコメンタリー
・2024卓上カレンダー