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「私はダブル濃厚接触者になったけれど、幸いコロナには罹患(りかん)しなかったんですよ。ただ、船内には、もう生きていけないと海へ身投げしようとした女性もいたのですが、クルーにギリギリ止められてね」

下船後は、今度は埼玉まで連れて行かれてそこで20日以上滞在。その後、自宅待機を余儀なくされたという。「当時はコロナの正体がよくわからなかったので、まるで犯罪者扱いでしたよ」。

孫は保育園に登園禁止。同居していた息子も出勤停止。妻の元に友達から電話がかかり、夫がコロナの濃厚接触者だとわかると、電話を無言で切られたという。「おかげで本当の友達が誰かわかってよかったわ」と後で妻に言われたという。

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次に、この男性が船に戻った時はクルーズ仲間6人のうち、自分以外は全員引っ越しをしたと聞いたそうだ。風評被害はあまりにもひどかったと振り返る。そんなコロナ発症のDP号だが、今は何事もなかったように、大海原をゆく。それでも「今回も、誰にも言わないで来ているんですよ」と話す男性はこんな裏話も教えてくれた。

「長く乗っているとね、窓のない部屋を申し込んでいても、自然と部屋のアップグレードをされることがあるんです。冷蔵庫にドリンクがたくさん入っていたり、扱いが難しい服でもクリーニング無料になることも。今年はDP号日本就航10周年だったということで、6月くらいまでは船内で半額セールもやっていて、それで今回来ている人も多い。中には、5万円以下で乗っている人もたくさんいますよ」

今後もそのような特典がつくかどうかは不明だが、常連客になればいいことは多そうだ。

高級老人ホーム化する豪華客船

船内のツアーデスクでも「何クルーズも乗り継いでいるシニアは多い」と聞いた。何でも、下船するのは孫のバースデーくらいであとは船で過ごしていた方が、老人ホームに入るより、優雅に楽しく余生を過ごせる、と。

確かに、バリアフリーの部屋もあるし、車椅子で乗り込んでも大丈夫、何かあれば客船スタッフは素早く飛んできてにこやかに対応してくれる。都会の喧騒から離れ、大海原で朝日と夕陽と星空も見ることができて、寄港した場所では気が向いたら降りればいい。3食ついて、長く乗っていればクリーニングなどのさまざまな特典があり、同じ階級の友達もできる。さまざまなアクティビティがあるから、リクリエーションにも事欠かない。遊びは用意されている。