〈「逆に壮観だな」
目の前に広がる光景に思わず独りごちた。空き地が広がる荒野の中に、20階近い高層マンションが50棟ほど立ち並んでいる。その規模に驚かされただけではない。夜になっても窓に光が灯った部屋は全体の1割程度。人の気配をほぼ感じないゴーストタウンの姿に息を飲んだ〉
9月下旬に中国を現地取材したジャーナリストの高口康太氏が、月刊「文藝春秋」12月号と「文藝春秋 電子版」に寄稿し、中国の不動産危機の最新状況をレポートしている。
「敷地内にスターバックスも! 豪華な商店街もスポーツジムも完備」
高口氏がまず訪れたのは、貴州省貴陽市の巨大高層マンション団地「西南上城」。この10月に債務不履行に陥ったデベロッパー最大手「碧桂園」(カントリーガーデン)が建設し、2021年に完成した団地だ。不動産危機でデベロッパーの資金が途絶える直前、滑り込みセーフで完成した。
〈路線バスの終点からさらに20分近く歩いて、ようやく目的地にたどりついた。片側4車線の立派な道路が荒れ地を貫き、その脇に巨大団地が広がっている。20階近い高層マンションが50棟ほど並んでいると書いたが、正確には1キロほど離れた場所にまた同規模の巨大団地が散在しているので、ともかく信じられないほどの規模である〉
しかし住民に話を聞くと、不動産危機によって団地の実態は当初デベロッパーが宣伝していた計画とは大きく異なるものになってしまったという。