夫人には法人カードで4億ウォンを私的流用した疑惑
ソウル中央地検は、李元大統領の“アキレス腱”と目される夫人を非公式に召還する予定ともいわれる。夫人は「ダース」の法人カードでリゾート地や百貨店、病院などでプライベートに4億ウォン(約3900万円)を使用したなどの容疑が浮上しているが、「夫人も非公式で検察の調査を受けた盧元大統領の時とまったく同じ構図を再現しようとしている」(前出記者)と揶揄する声もある。
それにしても、退任(2013年2月)してから5年は経っているとはいえ、李元大統領を擁護するような支持者の姿はまるきり見当たらない。収監された拘置所前には多くの市民が訪れていたが、罵声だけが飛びかった。朴前大統領の場合は弾劾訴追によって罷免され、任期半ばで退任したという事情もあるが、熱烈な支持者たちが今でも「釈放しろ」とシュプレヒコールをことあるごとに叫んでいるのとは対照的だ。李元大統領は警護などの面から朴前大統領とは別の拘置所に入り、3坪ほどの独房に収監されたという。
過去、逮捕された全斗煥、盧泰愚元大統領はそれぞれ無期懲役、懲役17年の実刑となったが、2年後には特別赦免された。今も拘置所にいる朴前大統領には、2月27日、懲役30年、追徴金1185億ウォン(約117億円)が求刑され、4月6日には一審判決が出る予定だ。
権力者から見下ろされる側には“恨み”が積もる
韓国の現代史を振り返ると、朴正熙元大統領は暗殺され、自身が逮捕されないまでも、金泳三、金大中元大統領も息子が逮捕されるという憂き目に遭っている。なぜ、韓国の大統領にはこうした悲劇が起きてしまうのか。
「韓国の大統領が持つ巨大な権力に人が群がり、自身もそれに搦め捕られる」(前出記者)ともいわれるが、韓国社会に深く根づく「権威主義」がそこに見え隠れする。韓国でいう権威とは富だ。持てる者は“徳”とはかけ離れていることが多く、持たざる者を見下ろす視線は限りなく侮蔑的で冷淡なため、見下ろされる側には“恨み”が積もる。そして、それが悲劇という形(逮捕など)で現れると一般の人たちはカタルシスを覚え、社会が浄化されたかのような錯覚に陥ってしまう。
李元大統領は逮捕を覚悟していたのか、用意していた自筆の手紙をフェイスブックに掲載し、そこには「誰かを恨むよりも、すべては私のせいという思いで自責の念を覚える」、「クリーンな政治を行うと努力したが今日、国民の目の丈と照らし合わせると行き届かなかった部分がなくはなかった」などと綴られていた。最後の手紙には、「2018年3月21日暁」と記されていた。
では、文大統領はどうなるのだろう。
40代の知り合いの主婦はこんなことを言って笑っていた。
「保守派はカネに理性がなく、進歩派は異性に理性がない。文大統領は夫人がしっかりしているみたいだから、歴代大統領では初の平穏な余生を送るんじゃないかしら」
さて――。