NHK連続テレビ小説の第109作目となる『ブギウギ』の脚本を務めた、足立紳(51)。
小説家としても活動する彼に、NHKのギャラ支払い事情、事務所の社長でもある妻との関係、9月に刊行した新作小説『春よ来い、マジで来い』などについて、話を聞いた。(全3回の3回目/最初から読む)
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NHKドラマとスーパー低予算映画、圧倒的に違いが出る美術
――『ブギウギ』や『拾われた男 Lost Man Found』など、NHKのドラマを手掛けてきて「NHK、ここがすごいな」と感じたところはどこでしょうか。
足立紳(以下、足立) まず、美術ですね。僕は低予算の映画が多かったのもありますけど、僕がやってきたような映画よりもはるかにお金があるのでとくにそれを感じます。時代考証の部分も含めて、圧倒的に違いが出てしまうのって美術なんですよね。当たり前なんですけどね。潤沢な予算のある映画なら負けないですが。
食事なんかも、「NHKは上品な撮り方をするよな」っていつも思いますね。実際にちゃんとメニューを作って、その画を絶対に寄りで撮らない。食べ物に寄るような、いわゆるCM的なシズルカットは撮らない。“本当に食事している”ってのを撮るんです。そのあたりはとても好きですね。
個人事務所TAMAKAN社長の妻
――個人的なお話になりますけど、今年4月にX(旧Twitter)で「妻の会社の社員になりました」と個人事務所TAMAKANの設立を発表しました。朝ドラみたいな大口の仕事を受けるには、法人化が必須という決まりが?
足立 いや、そんなことはぜんぜんないです。会社を立ち上げたのは、去年3月に撮っていた『雑魚どもよ、大志を抱け!』のためなんですよ。妻がプロデューサーとして入って、僕たちも出資したんです。
で、これからも映画を作っていくんだったら、脚本と監督をやるだけじゃなくて、そういった形でもやっていかなきゃいけないなって思いもあって。それをずっと考えていたのは、妻なんです。べつに朝ドラをやるから会社にしたんじゃないです。
「仕事の依頼はTAMAKANのほうへ」ってX(旧Twitter)に書いたら、日刊スポーツのお世話になっている記者の方が記事にしてくださって。びっくりしましたけど(笑)。まわりの友達から、僕が頼み込んで記事にしてもらったように思われて「お前、どんだけ目立ちたいの?」的なことを言われました(笑)。
――では、社長である奥さんがいろいろしっかりと。
足立 超ブラック会社ですよ。社長である妻からのパワハラはひどいし、給料は当初聞いていたものよりかなり安くなったし(笑)。夢にまで見た念願の正社員なのに「これかよ!」って。