子どもから大人へと育っていく過程において、性にまつわることで嫌な経験——トラウマとして、こころに深い傷を残すような経験——をすると、その後の人生を大きく変えてしまうであろうことは、みなさんにも想像できるでしょう。
「性にまつわる嫌な経験」は性犯罪に限らない
その人に落ち度があるわけではないのは当然であり、大前提です。本人が一番、避けられることなら避けたかったに違いないことは、言うまでもありません。だけど、すでに起きてしまった。消せない事実を抱え、その後の人生において、その人がどのようにそこから回復していくか。そうした経験をうちあけられたとき、まわりがどのようにサポートできるか。どうしたらそんな経験をする女性を減らせるか、より効果の高い予防の仕方とは、といった社会全体で取り組むべき課題として、今後も追究し続けるべきだと思います。
「性にまつわる嫌な経験」というのは、深刻な性犯罪に限りません。
性被害にあってしまった人とあったことがない人のあいだには、くっきりと線が引かれているわけではなく、例えば、ちかんにあったことがあるとか、お兄ちゃんから嫌なことをされたことがあるとか、「言われてみれば、あれは被害といえるかもなぁ」と思いあたるできごとは、いくらでもありえるのです。
そこには無数のケースがあって、本人がどのくらい傷ついたか、そして、その後の人生への影響についても、色濃く影響を受けた人から淡くしか覚えていない人まで、まさにグラデーションのようなイメージです。
少なくとも、何かあったときに娘さんが話してくれるかどうかは、親子がいろんなことを話し合える関係性であることが欠かせません。幼いころから望ましい関係を築いていくことが、娘さんを守ることにつながるのです。
構成/長瀬千雅