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野田首相に仕えたのは不運だったのか

 ところでくだんの質問は、陰謀論めいた勘ぐりが過ぎると多方面から非難されることになる。とはいえ、首相秘書官として誰に仕えたかが、その後の官僚人生に影響しないわけでもないようだ。たとえば「15年に次官となった田中一穂氏のことですが、彼は目立った実績はなくても、第1次安倍政権で首相秘書官を務めていた。官邸に覚えめでたければ重用される、という前例が生まれたのです」(注2)と週刊新潮にあるように。

 それからすると、太田理財局長がかつて秘書官として仕えたのが野田佳彦首相だったのは、「三十数年間の官僚人生は、事務次官というひとつの椅子を勝ち取るために延々と繰り広げられる戦い」(注3)にあっては、不運におもえる。とはいえ国税庁長官の座には、かの佐川宣寿氏にいたるまで理財局長経験者が4代続けて就いており、太田理財局長も順当にいけばそのポストに就くのだが。

財務省 ©文藝春秋

財務官僚は「無駄なことは語らず、目立たず」が王道

 こうした財務官僚の世界とはいかなるものか。別冊宝島Real『財務省の闇 最強官庁の「出世」「人事」「カネ」』(2016 年刊)によると、「無駄なことは語らず、目立たず」を王道とし、たとえば、ある事務次官は「目立たない。無駄なことを言わない。相手の言うことを否定しない。大きな声を出さない」人物だと評価される。

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 ついでながら自民党の実力者・二階俊博は「地味な風貌で、弁も立たず、目立った政策もない。当世の“人気政治家の条件”には、まず当てはまらない」ながらも、ときの権力者に重用される。それはなぜかと訊ねられ、「そりゃ私が無口だからですよ」(注4)と答えている。余計なことを言わないのは、どんな世界でも大事なようだ。