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内川の笑顔で涙腺決壊 広島CS敗退の無念にやっと向き合えた日

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/03/30
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 まずは昨年の話である。

 暮れの話である。

 日付がわかる。

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 11月26日の話である。

 おいおい、プロ野球開幕だよ、いまの話を書けよ、と思う人もおられるかもしれませんが、ここを記さないと私の2018年プロ野球は始まらない。

 大丈夫です。ちゃんと広島カープ開幕の話になります。たった4日間しかオフシーズンがなかった唯一の球団、広島カープの話になります。

 で、まずは11月26日。

たまたま鉢合わせたホークスの優勝パレード

 11月26日の朝、私は福岡空港に降り立った。相撲取りに間違われた。その話は割愛する。天神までタクシーに乗ったら途中で交通規制のため大渋滞になった。目的地まで1キロぐらいあったが歩くことにした。街には人がたくさんいた。子供もたくさんいた。お年寄りもたくさんいた。美しい女性も多かった。前々から感じていたが博多の女性は美しい。その美しい女性が走ったりもしていた。ホークスの優勝パレードがあるのだ。

 たまたま出くわした人間が前のほうで見るのはよくないと思った。熱烈なファンの視線を遮るわけにはいかない。かといって興味がないわけでもないのだ。私は徐々に形成されていく沿道の人垣からずっと離れた後ろの道端に腰をおろした。落ちていた段ボールをザブトンにしたので快適だった。いつ始まるかわからないパレードを馴染みのない街角でぼんやり待っているのも旅情であった。

 その日はケンドーコバヤシとのライブがあるので博多に来たのだ。私は松山から飛行機で来た。早朝の便しか空きがなかったのだ。ライブは夕方からなので時間は空くが漫画喫茶で寝ようと決めていた。なので時間はあったのだ。

 パレードが始まった。物凄い歓声だった。なにかが近づいて通過していく。それはわかった。が、私のいる人垣の後ろからはなにも見えなかった。その時点で私の中にとりたてて感情的なものはまだなかった。その瞬間、人垣にすきまができた。人がまとまって何人か動いたのだ。その動きが奇跡的にすきまを発生させた。そしてそのすきまから選手の笑顔が見えた。内川だった。内川聖一選手だった。パッ、パッと続けて2度、見えた。2度合わせてゼロコンマゼロ何秒の世界。気が付いたら私の頬を涙が流れていた。疲れているのだ、と思い、漫画喫茶を探して入店。フラットタイプのブースの中で予定通り寝転んで目を閉じた。

 涙がぼろぼろとこぼれてきた。

 ぽたぽたと床に落ちた。

 ふいてもふいても涙が流れて遂には声が出た。嗚咽になった。手のひらで口を塞いで、泣いた。

 そのときわかった。泣きながら、やっとわかった。

 私は蓋をしていた。

 CSで横浜に敗れ、日本シリーズの権利を獲得できなかったあの日から。私は蓋をしていた。あのときに泣くべきだった。悲しむべきだった。

ホークス優勝パレードでの内川聖一
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