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内川選手の笑顔が私を解放した

「広島は暴動が起きるかもしれんですよ」

 あの日、私は松山にいた。広島から松山に来ていたマスコミ関係の某は私にそう言ったが暴動は起きなかった。私は私でラジオ番組の取材に応えたとき、横浜の健闘を讃えて頑張ってくださいと話した。必死で話した。歯をくいしばったら話せないからこころをくいしばっていた。滅私トーク。心神喪失状態だった。

 そのまま時がすぎていたのだ。

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 ホークスの優勝で日本シリーズも終わり、野球の話題もなんとなく少なくなり、日々の暮らしを生きていた、その中でホークスのパレードに鉢合わせたのだ。そして内川選手の笑顔が私を解放した。止まっていた時計が動き始めた感覚に近い。私が私にかけた魔法が内川選手の笑顔で解けたのだ。

 それぐらいつらいことだったのだ。

 心神喪失状態にでもしなければ耐えられないほどのつらさだったのだ。悲しさだったのだ。無念さだったのだ。

 その日、ライブでも私はその話をしたが、終演後、ケンドーコバヤシと屋台で話の続きをした。つらい気持ちはためないほうがいいんだろうけどためてしまう部分もある。ちなみにケンドーコバヤシはタイガースファンである。

 さて。

 3月25日。日曜日。オープン戦最終日、カープの相手はホークスだった。金曜、土曜もホークス相手の3連戦。それは夢にまで見た対戦相手であり、その場にいたカープの選手の顔ぶれも含めて感無量の極みであった。3連戦すべて完全録画して何度も見た。ここで触れることは敢えてやめておこう。金曜、土曜がヤフオクドーム、日曜の最終戦がマツダスタジアム。マツダスタジアムの雰囲気はただのオープン戦ではなかった。なにかがざわめき、なにかが爆発して、なにかが始まり、なにかが終わった。

 広島カープの2017年プロ野球が、2018年3月25日、やっと終わった。

2017年、リーグ優勝の瞬間 ©文藝春秋

 そして3月30日、2018年のプロ野球がスタートする。

 暴動を起こさなかった私を含めたファンのみなさん、がまんしてよかったですね、と言いたい。あれで暴れてたらやはりなにを言われたか、そしてどうなったかわかりません。

 旅先の漫画喫茶で嗚咽を堪えるのもつらいけど、やはり野球は相手あってのことだし基本はみんながたのしくなるためのもの。耐えるべきは耐えてがんばりましょう。

 あと余談かもしれませんが。内川選手の笑顔にはなにか人をよくない世界から抜け出させてくれる、そんな力があるのかもしれません。あのとき内川選手が笑顔でなかったら、またはそもそも見えていなかったら、私はいまの私となにかが違っていると思います。

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