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「歌舞伎界で僕は自由だけど必要とされているのかな」端正な顔立ちで注目の中村隼人(29)が目指す“役者像”《名家の人の葛藤が羨ましいと感じることも…》

source : 週刊文春

genre : エンタメ, 芸能

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 今、歌舞伎界で最も注目を集めている若手俳優が、中村隼人(29)だ。今年は数多くの舞台で主役を勤め、その評価を高め続けている。着々と地歩を固める彼が目指す道は――。

トルコの旅に彩りを添えた思いがけない瞬間

 来年2024年は日本とトルコ共和国の外交関係樹立百周年。日本の伝統芸能の担い手である歌舞伎俳優の初代中村隼人が文化交流のため訪れたトルコの旅に密着した。

©杉山拓也/文藝春秋

「イスタンブールで印象的だったのは、東ローマ帝国時代の360年に建立された世界遺産のアヤソフィア。キリスト教の総本山でしたが、1453年にオスマントルコに征服されてからはイスラム教徒のモスクに。聖母子像とイスラム教の円盤が共存していて、宗教の歴史とトルコの寛容さを実感しましたね。建物を美しい形で保存し、文化を大切にするトルコ人の気質も感じられました」

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 さらに足を延ばして、世界に類を見ない景観が広がるカッパドキアへも。

「火山の噴火によって形成された奇岩群を気球から眺めるというかなり貴重な経験をしました。キリスト教徒がこの奇石をくり抜いて造った洞窟住居に住んでいたそうで、今ではその住居が人気のホテルやレストランに生まれ変わっているんです」

 名所旧跡巡りの合間には、絹製のトルコ絨毯のなめらかさに歓声を上げ、トルコ石の指輪を私的に購入し、グランドバザールの店を何軒もハシゴするなど、ショッピングに興じた時間も。そして、世界三大料理に数えられるトルコ料理も“料理男子”である彼の旅に彩りを添えた。

「ケバブって“ローストした料理”を指す言葉なんですね。だから、羊も牛もシーフードもある。いろんなケバブを食べられたのが良かったです。あと、僕のようなワイン好きにはトルコは最高。トルコワインは6000年の歴史があって、カッパドキアには一面のブドウ畑が。僕は白ワインが好きなんですが、赤ワインも香り豊かで飲みやすく、渋みも強すぎず、本当に美味しかったです。今後リピートしたいですね」

 11月30日に30歳の誕生日を迎える隼人。同月25日までは歌舞伎座『マハーバーラタ戦記』の舞台で、インドの王子に扮している。

「30歳になっても主役を張れなければ…」

「僕は、公演中に誕生日を迎えることがほぼないんです。公演中に迎える人は、幕が下りた後に皆にケーキでお祝いされるんですよね。僕はいつもお祝いする側だから、正直羨ましい(笑)。でも、今年は忙しかったんで、誕生日はゆっくり過ごそうかな」