2018年のプロ野球シーズンが始まる。中日ドラゴンズのファンにとって、今年ほどエキサイティングなシーズンはない。それは一体なぜか?
単純な話だ。大ピンチこそ面白いのだ。
なにせドラゴンズは球団創設以来、最大の危機的状況にある。5年連続Bクラスというのは、これまでの80年以上に及ぶ歴史の中で一度もなかったことだ。現在のドラゴンズは“史上最弱のドラゴンズ”と言っても過言ではない。
27日に発表されたプロ野球評論家20人による順位予想では、最下位予想が11人、5位が5人だった。圧倒的なBクラス予想。ドラゴンズOBが多めでこれだ。元阪神監督の岡田彰布氏はキャンプの時点で「素直に判断すればBクラス」と言い切っていた。そらそうよ、じゃねえっつうの。素人まで尻馬に乗ってドラゴンズを最下位にしていたりするから、こっちのハラワタは煮えくり返っている。
たしかに、今のドラゴンズは弱い。選手も球団もファンも、まずはそれを認めるところから始めなくちゃいけないんだろう。昨年は開幕5連敗を喫した。開幕戦では大野雄大が巨人打線に捕まって火だるま。第2戦では田島慎二がにっくき阿部慎之助に逆転サヨナラ3ランを食らってしまった。ドラゴンズは夏場も弱かった。7月26日には最下位ヤクルト相手に空前絶後の10点差からの逆転負け。目を覆わんばかりの惨劇の数々に、ナゴヤドームに閑古鳥が鳴くのは日常となった。
でも、今年は違う。ちょっと負け続けたからといって、目を背けていると大事なドラマを見逃すことになる。昨年の、いや、この5年間の屈辱は、壮大な前フリだ。
“球界の養老院”の世代交代
『風の谷のナウシカ』で腐海の底から新たな植物の芽が生まれたように、焼け野原となったドラゴンズからも新たな芽が生まれ始めている。“球界の養老院”の異名をとったドラゴンズは今、長年の課題だった世代交代の真っ只中にある。それは先発投手を見ても明らかだ。
2017年の開幕ローテーションは、大野雄大、ラウル・バルデス、吉見一起、若松駿太、八木智哉、ラウル・バルデスだった。当時39歳だったバルデスおじさんが2回投げているところがヤバさを端的に表している。結局、シーズンを通して吉見は3勝、若松は1勝に終わり、八木はシーズン終了後に引退した。
それが今年はどうだ。小笠原慎之介、ディロン・ジー、笠原祥太郎、柳裕也、松坂大輔、オネルキ・ガルシア(または鈴木翔太)とガラッと様変わりした(大本営・中日スポーツによる予想)。球団史上最年少の開幕投手となった小笠原をはじめ、去年1年で台頭してきた若手選手たちが中心だ。開幕ローテーションがまるっきり違うメンツになっているチームは、12球団を見渡してもドラゴンズ以外にない。オープン戦で不調だった又吉克樹にも奮起を期待したいし、ブルペン陣にドラフト1位の鈴木博志が加わったのも見逃せない。
打線ではホームラン王のアレックス・ゲレーロが流出したが、そのかわりに遅咲きの和製大砲・福田永将がクリンナップに陣取るようになった。福田はかつて落合博満元監督が構想した「右の四番候補たち」の末裔だ。昨年の新人王・京田陽太も2年目のジンクスを感じさせない好調ぶりを持続している。永遠の未完の大器、高橋周平も開幕に向けて調子を(打率1割台から2割台へ)上げてきた。昨年の病院慰問で「来年の漢字を一文字で」と問われて「継続(二文字)」と答えた周平だが、今の調子をシーズン通して継続してもらいたい。