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圧倒的Bクラス予想の中日 “史上最弱“からの逆転ストーリー

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/03/30
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面白いのは敗者が勝ち上がるストーリー

 面白いのは勝ってばかりのストーリーじゃない。ボロボロに負けた者が、再起して勝つ、勝ち上がっていくストーリーが面白いのだ。

『ロッキー』では負け犬のロッキーがド底辺から必死に這い上がって栄光を掴んだ。『ブラックパンサー』だってブラックパンサーはライバルにズタボロにされながら谷底から蘇ってきた。面白いストーリーの形ってのは、何十年、何百年と変わっていない。

 大ピンチを逆に意気に感じて暴れまわる選手が登場すれば、一躍ヒーローになれる。松坂大輔がやってきて全国的な注目が集まっている今ならなおさらだ。新たな主力となる小笠原や京田には、立浪和義ばりの「負けん気」(立浪の著書のタイトル)が見える。大島洋平、平田良介ら実績のある選手はもちろんのこと、大野、田島、周平らにも「お前たちが主力になってから弱くなった」と言わせないような活躍を見せてほしい。

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立浪和義ばりの「負けん気」が見える小笠原慎之介

 若いチームには起爆剤が必要だ。『がんばれ!ベアーズ』という映画には、美少女投手のテイタム・オニールが相手の選手にラフプレーをしかけられ、それまで心がバラバラだったオンボロチームが激怒してチームが一丸となるシーンがあった。「乱闘をしろ」と言っているわけではないが、戦いに勝つには、こういう怒りや「ふざけるな、この野郎!」という気迫が必要になる。昨季、日本ハムから移籍してきた谷元圭介は大野奨太に「(中日には)澄んだ心を持った選手が多い」と報告していたらしいが、それじゃダメだ。プロらしいギラついた目で敵を「殺し」に行ってほしい。

 3月3日、ナゴヤドームで行われた星野仙一さんの追悼試合は、序盤にベテランの山井大介と吉見が打ち込まれ、そのままズルズルと大差で負けてしまった。調整段階だから仕方ないとはいえ、メモリアルな試合であまりにも一方的な虐殺を見せつけられたファンは、星野さんのために用意してきた涙を流すタイミングも失った。バックネット裏で僕の斜め前に座っていた中学生男子は、試合途中から携帯ゲームに夢中になる始末。こんな戦い方では、ファンを増やすなんて夢のまた夢だろう。

 大切なのはロッキーのような死に物狂いで相手に食らいつく気迫だ。ブラックパンサーのような諦めない心だ。ベアーズのようなチーム一丸となった怒りだ。大差のついた試合だって捨てちゃいけない。「負け試合」を作って手を抜くのは強者の戦略であって、弱い挑戦者は最後まで一球一球にかじりつかなくちゃいけない。

 去年のような、過去5年のような、星野さん追悼試合のような、シーズン順位予想のような屈辱は、もうまっぴらだ。選手と球団とファンが一体となってそう感じていれば、上昇の目はきっとある。屈辱は糧に変わる。実績のない若いチームは、最下位の可能性もあるが、ハマれば勝ち進むことだってある。我々ドラゴンズファンも、ハイリスク・ハイリターンの戦いから目をそらさず、最後まで応援しよう。2018年の中日ドラゴンズ。こんなに面白いストーリーを見逃してしまう手はない。

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