暴言を悪いと思っているのかと聞かれても、やはり「暴力ではないので……」と答えるだけで、謝ってやり直したいと言うことも、だからといって開き直ることもしないということでした。
結局、暴言の録音と書き起こしを証拠として提出したところ、調停委員に「ここまで激しく怒鳴りつけていたら、やり直すのは難しいですよ」と言われて、夫は離婚に応じました。
こうしてA子さんは離婚することができました。
なぜ「内弁慶モラハラ夫」が生まれるのか
実はこのA子さんの事例は、昨今の「モラハラ離婚」のスタンダードな事例です。
妻に毎日のように度を超えた暴言を吐いている夫が、いざ離婚を求められると、弁護士にも裁判官にも何も言えず、まともな意思表示もしないまま離婚に応じる……。
モラハラ夫と聞くと、もともと気が強い夫が家で暴君のように振る舞っているところを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし実際はA子さんの夫のように、外では大人しい人が、家では別人のように妻や子どもに暴言を吐いているという、二面性のある人が多いのです。いわば「内弁慶モラハラ夫」です。
なぜこのような夫が多いのでしょうか。
学歴コンプレックスと高いプライド
実は彼らは、現代におけるリアルな男性像という現実と、彼らの抱く理想とのギャップを表していると思います。
まず、こういった夫に共通するのは、「学歴コンプレックスがあるがプライドが高い」という点です。名の知れた大学出身ではあるものの、第一志望ではなかったのか、周囲の友人に比べると劣等感を覚えるのか、本人には強い学歴コンプレックスがあり、受験時代や大学時代のことを聞くと黙り込んだり、怒り出したりします。
その一方で、プライドが非常に高く、テレビに高学歴タレントが出ていると「学歴はいいが地頭が悪い」「付属上がりで大学に行っただけ」「この学部はいまいちだ」などとケチをつけます。
友達がおらずコミュニケーションが不得手
もう一点は、「友達がいない」ということです。友達が少ないのではなく、一人もいないこともざらです。妻からは「呼べる友人がいないので結婚式を挙げなかった」「休日も必ず家にいる」「飲み会に行くのを見たことがない」という信じられないエピソードが出てきます。