しかし、いざ弁護士のところに行っても、緊張してうまく話をすることができません。自分が悪者になるのは嫌なので、離婚を受け入れることはできず、だからといってプライドが邪魔をして、妻との関係を修復したくても素直に謝ることもできません。
離婚に際して弁護士に依頼しない人は少なくありませんが、それでも通常は自分の考えや意見を伝えることはできるので、話し合いは進めることができます。しかし、このタイプのモラハラ夫は、自分の考えもなく、反論も的を射たものではないので、話し合いが全く進みません。
「夫は弁が立つ」と思っているのは妻だけ
調停になっても同様なので、調停委員からは、「何か不満はあるようだけど、どうしたいのかまったくわからない」と言われてしまいます。長い書面も、何を言いたいのかがわからないので、誰も取り合いません。
最初の相談で妻が心配していた「夫はとても弁が立つ人なので、先生も言い負かされてしまうかもしれません。調停委員や裁判官も夫に説得されてしまうかも……」は全くの杞憂(きゆう)なのです。
これが「内弁慶モラハラ夫」の実態です。
経歴だけで判断すると危険
「なぜこんな人と結婚してしまうのか」と思うかもしれませんが、こういった夫と結婚に至るのには、女性の側にも事情があります。
今の時代は、「いい人と結婚したい、でも出会いがない」という場合、マッチングアプリやお見合いサイトに登録して相手を探すことになります。
その時に「いい人」をどう判断するかというと、やはり経歴を見ることになります。いい大学を出て有名企業で働いている人は、「いい人」と判断されがちです。そして会ってみて一見真面目そうな人となると、相手を運命の人と思い込んで、比較的短い交際期間で結婚します。「マッチングアプリにこんないい人がいると思わなかった」と、皆さん口をそろえて言います。
大体は結婚式の準備あたりで、友達がいないこと、家族と疎遠なことに気づき、おかしいと思うものの、後戻りできずそのまま結婚してしまいます。