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屈辱から始まる石川直の物語

 その昔話と2018年の開幕シリーズがどうつながるかというと、長々しい説明を端折ってシンプルに要約すれば、僕は石川直也と一緒に恥をかくってことだ。笑ってくれて構わない。僕は今シーズン、石川直と一緒に生きる。石川直は今年、クローザーの期待がかけられている。鍵谷陽平の戦列復帰が間に合わないこともあって、開幕時点で候補の一番手だ。高卒4年目の21歳。球威がある。角度がある。足りないのは実績だけだ。

 が、開幕シリーズではぶざまなピッチングを晒した。開幕第2戦の9回表、四球でランナーをため、山川穂高に3ランを喫するなどして4失点だ。せっかくチームが1点差まで追いすがっていた流れをぶち壊した。翌第3戦の9回表、監督から名誉挽回の機会が与えられたが、この日も1失点で反撃ムードに水を差している。オープン戦序盤は順調に来ていたが、最後のヤクルト戦からどうもおかしい。

抑え候補として奮闘する高卒4年目の石川直

 忘れられないのは第2戦、打たれて顔面蒼白になり、ベンチに下がって顔を伏せてうなだれていた姿だ。しばらくうつむいたまま動けず、ようやく顔を上げたときは目が真っ赤だった。好青年だが、本当にいっぱいいっぱいなのだ。まだ試合が続いているのにあんな姿を見せてはいけない。投手でいちばん大切なのは闘争心だ。

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 だけどね、その石川直の姿が心に残ったんだ。僕はこの余裕のないワカゾーを見捨てない。●●●スタートだ。屈辱から始まる物語でいいじゃないか。いつか武田久や増井浩俊がそうであったように、ランナーを出しても平気の平左で、遊び球をまじえつつ、点差すれすれでリードを守り切るようなタフなマウンドを見るんだ。

 9年ぶりの開幕3連敗も、連日のリリーフ失敗も、起承転結でいえば「起」だ。石川直が大勢集まってるようなチームがファイターズだ。まだぜんぜん出来ていない。色々ぶざまでカッコ悪いかもしれないけど、僕はこのチームの成長を応援する。2018年シーズンが始まった。待ちに待ったプロ野球が始まった。

追記  石川直也は4月3日の楽天1回戦、9回裏リリーフに立ち、初セーブを挙げた。おめでとう。感動した。だけど、ここに書いたことは直さない。失敗しながら一歩一歩成長してほしい。失敗したら僕も一緒に恥をかくよ。心配いらない。本当に頑張れ。

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