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「身勝手な犯行であり、強く非難されるべき」

 一方の弁護側は、偽名まで使ってAさんに会いに行ったのは「死ぬ前にもう一度Aさんのサービスを受けたい」という好意の表れだったと主張した。「ナイフは持っていたものの殺人の計画性はなかった」「Aさんに拒絶されてプライドが傷つけられて殺意が生まれた後も、すぐには実行せず逡巡していた」などの点を強調し、懲役12年を主張していた。

 裁判所が下した判決は、懲役16年だった。

 今井被告はAさんを背後から約8.6センチの刃渡りがある折りたたみ式ナイフで3回刺しており、Aさんが死亡するのを見届けてもいる。これらの点から「強固な殺意」があったと認定され、「身勝手な犯行であり、強く非難されるべき」とも加えられた。

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亡くなったAさん

 さらにAさんの両親や婚約者は今井被告に対して強い処罰感情を持っており、弁護側が主張する「懲役12年」では軽すぎるという判断がなされたことになる。

 検察側が求めていた「懲役18年」ではなかったのは、今井被告が事実を認めていること、謝罪・反省していること、母親が社会復帰のためにフォローする気持ちを示していることなどが考慮されたのだろうか。

今井容疑者が住んでいた寮

 野村裁判長は「命の大切さについて考えてほしい。その上で、社会復帰に努めてほしい」と述べた。今井被告は、角刈りのジャージ姿で黙って判決内容を聞いていた。法廷は報道席がなかったものの、一部で注目を浴びたためか、傍聴席は満席だった。

 今井被告は論告を終えた後、「母は『自分(の育て方)に落ち度がある』と思っているが、僕は違うと思います。母は間違っているとは思わない。自分がダメなだけでした」と述べていた。