大胆な内装に驚かされるが、よく見ると館内は段差がなくてユニバーサルデザインを意識している。
ナトリウム濃度の高い源泉を保有し、自慢の温泉は露天風呂に注がれ、そこには必要な時のみ設置できる入浴介助補助機が用意されている。浴場の車いすに乗ったまま温泉入浴ができるのだ。
「お客様が触れるもの、口に入れるものには妥協せず、全て私が納得したものです」と、ルームウエアは独自に開発した。ハト麦の糠を抽出した成分を繊維に配合した生地を使っていて、とても柔らかい肌触りだった。アメニティはナチュラルコスモ。特筆すべきはタオルだ。銭湯タオルという名で、一見ただの白いタオルだが、温泉でも実によく泡立つ。
「女将は私の天職」
ペットボトルは置かず、瓶に入った「北アルプス 宝水」。まさに美味!
料理もオリジナル。土地で育った新鮮かつ旬な食材を使い、文化も味わって欲しいと典子女将が「情土料理」と命名し、ご主人と共に作る。天然の生け簀(す)の富山湾を前にした氷見らしく、冬は寒ブリの刺身やしゃぶしゃぶなど、魚を贅沢に、天然塩やオリジナル発酵調味料や香草でどこかエキゾチックな味わいだった。栄養食のブルーグリーンアルジーというバクテリアも調理に活用。氷見豚ステーキには自家菜園の林檎ソースがよく合う。デザートは林檎タタン。
先ほどの「旅館か、ホテルか?」という問いには、「旅館です」と即答し、満面の笑みで「女将は私の天職」ときっぱり。お客さんをもてなしたいという気持ちの全てがこのワンダーランドのような宿に繋がっていた。きっとコアなファンを生むだろうし、理想を追求する典子女将の応援団も出てくるだろう。旅館の概念を変えてくれるかもしれない期待の女将だ。
撮影=山崎まゆみ
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保有する源泉はナトリウム塩化物泉でじんわりと染み入るように温まる。大女将、典子女将、若女将と3代の女将が揃い、民宿と天座をまわす。ご主人は腕ききの料理人で、寒ブリなど包丁の入れ方は富山一と評判が高い。
INFORMATION
湯の里いけもり
富山県氷見市指崎1632
TEL:0766-74-6123
ナトリウム塩化物泉
部屋数「天座」2室 「湯の里いけもり」5室 スタッフ数 15人